バリバリ仕事して、気づいたら59歳。肩書きは増えたけど、未来の設計図なんか、どっかに置き忘れてきた。そんな吉野千明が、鎌倉でふっと出会ったのが、地元の役所勤め・長倉和平。最初はウザかった。全力でウザかった。でもね、不思議と、隣にいることが苦じゃない。このドラマは、そんなふたりが13年かけて育てた“名前のない関係”の、続きの話なのよ。
今回は、そんなふたりを中心に描かれる『続・続・最後から二番目の恋』を、相関図とあらすじからよくある、『あるある』をピックアップして、じっくり見ていくわよ。
和平と千明の関係性:13年の歩みと今
出会ったのは13年前。仕事に追われてバリバリだった千明が、友人と共にするはずだった古民家暮らし、その地、鎌倉で出会ったのが、地元の公務員・長倉和平だったのよね。
最初はお互い、ちょっとウザかったのよね。千明はテレビ局のやり手プロデューサー、和平は堅物な市役所職員、どう考えても住む世界が違った。だけど、ぶつかりながらも、なぜか気になっちゃう。
千明は和平の鈍感な優しさに、和平は千明の不器用な自由さに、だんだん引き寄せられていったのよね。とはいえ、恋愛ドラマみたいにはいかない。
付き合ったり別れたり、燃え上がったり破局したり、そんなテンポじゃないの。
いわゆるパートナーとか夫婦って呼ばれるもんじゃないけど、誰よりもお互いのことをわかってるって感じ。
たぶん、若いころだったら、名前のつかないこの関係が不安だったかもしれない。でもね、13年経った今は違うようね。
千明も和平も、肩書きとか形とか、そんなものに縛られる気なんかさらさらなさそう。
千明は言うの。「ずっと一緒に生きていくんでしょ」って。
これが、二人の13年の歩みでたどりついたところ。燃え上がりもしない、でも消えもしない、地味だけどしぶとい、これが本当の“最後から二番目の恋”の形なのよね。
🎯 POINT!
恋とか愛とかそんな派手なもんじゃないのよ。年を重ねた二人がたどり着いた、しぶとい結びつき。燃えないけど、絶対に消えない。それが、本当に強いってことなのよね。
第1話相関図・コマ①|定年とセカンドライフに揺れる59歳のリアル

59歳、吉野千明。セカンドライフ説明会でため息ついてる。目の前には、定年を迎える社員向けセミナーの資料。でかでかと書いてあるのは「セカンドライフをどう生きるか」。
いや、こちとら今を生きるのに精一杯なんですけど?仕事一筋、テレビ局のゼネラルプロデューサー。ドラマ界の勝ち組、ヒット請負人、部下たちの憧れ。
でもさ、そんな肩書き、定年が見えた瞬間から急に薄っぺらくなるって誰が教えてくれた?結婚なし、子どもなし、家族もなし。自分で選んだ道なのに、今になって問いかけられる。「これからどうします?」って。
いやいやいや、そんなん今さら言われても困るんだけど。資料には、趣味を持てとか、友達を作れとか、誰が考えたんだかテンプレートな言葉が並んでる。
無理無理、そんなイージーモードな老後プラン、千明の人生にそんな選択肢、用意されてなかったから。春の鎌倉、若いカップル、ベビーカーを押す家族。ああ、若さって無敵だったなぁ。未来なんて考えなくても、何も怖くなかった。
でも気がつけば、目の前には“終わり”のカウントダウンだけがちらついてる。世間の59歳が家族と過ごすセカンドライフに夢を馳せるなら、千明には何がある?
いや、正確に言えば、「まだ何かあるかも」と思いたい自分と、「もう何もない」と諦めかけてる自分が、心の中で綱引きしてる。
で、そんな帰り道。極楽寺駅で和平とばったり。隣に住んでる、お互い干渉しすぎないちょうどいい距離感の男。何気ない、たった一言が救いになる夜もある。
誰にも会いたくない夜に、誰かとただ並んで歩けるって、案外でっかい奇跡かもしれない。千明は思う。ああ、これ、悪くないな。
人生の設計図を今さら書き換えなくてもいいかもしれない。特別な何かはいらない。ただ、隣に誰かがいて、今日も疲れたね、って笑い合えたら。それだけで、もう十分。
🎯 POINT!
「これからどうします?」なんて、若い奴は簡単に言うけどな、59歳にもなりゃ未来の設計図なんてそんなに柔らかくねぇんだよ。でもな、隣に誰かいて、なんとなく今日を終えられる。それだけで、十分すぎるくらいラッキーだって話。
第1話相関図・コマ②|未来が怖い59歳と、日常に逃げ込む63歳のリアル
セミナー帰りの千明は、ぶっちゃけ、少しキレていた。資料をカバンに突っ込んで、ぐいっとチャックを閉める。セカンドライフ?はぁ?未来設計?はぁ?今さら何をって話だよ。
人生の終盤戦をどう過ごすかって言われたって、終わる気配なんか毛ほどもないわけ。第一、趣味持て、友達作れ、運動しろ、海外旅行行け、って、何なのそのテンプレート。
千明は思う。あんたら本気で言ってんの?この歳になってからゼロから趣味探せって、どんな無理ゲーだよ。いったいどこにそんな都合のいい生き方、売ってんだよ。
しかもさ、こっちはな、バリバリ仕事して、バリバリ現役で、若い子に「千明さんすごいっす」って言われながら、妙なプライドで生きてきたわけよ。
それが今さら「ゆっくりした人生を」って、誰が言い出したんだよ。そもそもな、趣味を持つ暇も惜しんでここまで突っ走ってきたんだ。いきなりスローダウンしろったって無理なんだよ。
千明はため息をついて、こんなふうにムカついたり、ため息ついたりしてるうちに、気づけば定年。そのあとに待ってるのは、ぽっかり空いた毎日。
ヒマと孤独と、無駄に増えてく健康番組。──ああ、考えただけで胃が痛いわ。そんなときだった。極楽寺駅の改札を出たところで、あいつがいた。長倉和平。63歳。市役所の“観光推進課・指導監”っていう、ようするに定年後の再雇用ポジション。
スーツの上にヨレたコート羽織って、気づくと、ふたりは何も言わず並んで歩き出してた。静かに並んで歩くだけ。でもね、これがけっこう沁みるのよ。誰にも気を遣わない。ムリに盛り上げなくてもいい。
家族でも恋人でもない、でも、まるで長年連れ添った夫婦みたいなこの距離感。こっちはセカンドライフ設計図とかぶん投げたいくらいなのに、和平は和平で、多分そんなもの、最初から持ってない。
聞けば、別に趣味もない。市役所に行って、適当に仕事して、帰ってきて、また次の日を迎えるだけ。特別な未来も、特別な目標もない。
ただ、今日をやりすごす。それだけの毎日。それって、負けなの?いや、千明は思う。負けでも勝ちでもない。そうやって毎日を無事に終えるだけで、たぶん今はもう十分なんだ。若いころみたいに「夢を追え」とか、無理に言われたくない。
未来は怖い。でも、今日、こうやって何でもない会話を交わせる相手がいる。それって、未来に勝るかもしれないじゃない。千明は、駅から自宅までの道を歩きながら、ちょっとだけ心が軽くなるのを感じた。
定年も、未来も、そんなに怖くないかもしれない。だって、こんな夜が、これからも続くなら。
🎯 POINT!
未来なんか見えなくたって、特別な設計図なんか持ってなくたって、隣に誰かがいて、今日を一緒にダラダラできる。それだけで、人生って、けっこう勝ち組なのかもしれない。
第1話相関図・コマ③|同期が死んだ63歳、何も言えない59歳
63歳。長倉和平、同期の葬式に参列中。目の前にあるのは白い花、遺影、線香の煙。うわ、あいつ死んだのか。驚きはない、けど、ちょっとだけ立ちくらみする感覚。
そりゃそうだ。年も年だ。誰かが先にいなくなるなんて、順番みたいなもんだってわかってる。でもなぁ、あいつ、そんなに仲良かったわけじゃないけどさ、同期だぞ、同期。
何年も肩並べて、同じ空気吸って、仕事して、バカやって、それで気づいたら、死んでたってか?じわっと汗が出る。誰も気づかない、スーツの下、シャツの背中にじんわりと広がっていく冷たい汗。
和平は、手の中の数珠をぎゅっと握りしめる。手を合わせる、拝む。そんだけ。心の中、ぐるぐる回ってるのは、ただひとつ。
「次、俺かもな」。これな、洒落にならない。若いころなら笑い飛ばせた。自分にはまだ時間があるって信じて疑わなかった。
でも63歳って、どうも違う。先が短いって実感が、じわじわきてる。健康診断、血圧、コレステロール、痛風、腰痛。いつだって、どこかが壊れかけてる。
で、同期の奥さんが近寄ってきた。で、奥さんが言う。「主人、毎年あなたと温泉旅行に行くって、楽しみにしてたんですよ」。
和平、フリーズ。……え?そんな事実、ない。行った覚え、ゼロ。そもそもそんなに仲良くなかったし、温泉行ったことなんか一度もない。ってことは?つまり、同期は奥さんにウソついてたわけだ。
一人で温泉行って、誰かと会ってたのか、ただの息抜きだったのか、それは知らん。だけど、そのダシに使われたのが和平だったってのが、どうにも釈然としない。
若いころの和平だったら、ここでニヤッとしてこう言っただろう。「ええ、楽しかったですよ」。でも63歳の和平は違う。
もう、ウソをつくのがしんどい歳になってた。だから正直に言った。「それ、僕じゃありません」。奥さん、目がパチクリしたろうね。
それっきり、何も言わない沈黙があったかもね。重い。和平は軽く頭を下げて、その場を去った。
歩きながら、ふと思う。63歳って、ウソつけない年齢なんだな。優しさのためにウソをつく若さもない。正しさを押し付けるエネルギーもない。だから、ただ正直に、静かに生きるしかない。
でも、正直って時に人を傷つける。だからって、ウソをつくのはもう面倒くさい。そのジレンマを、和平はずっとポケットに突っ込んだまま、生きてきた。
そして、家に帰る途中。ばったり千明に会う。今日、こいつも葬式帰りだって言う。自分の元上司の。で、千明、ぼそっと言う。「あいつ、死んだのよ」。和平、ああ、そう、って感じでうなずく。
千明がまたぼそっと言う。「アホ部長、死んじゃった」。アホ部長?何それ。聞くと、昔、千明に「俺と千明、いい仲だ」って吹聴してたアホがいたらしい。
そんなの、セクハラの最上級やんけ。昔なら千明、キレた。啖呵切ってぶん殴ってたかもしれない。でも今の千明は、何も言わなかったんだって。
笑いもしない。怒りもしない。ただ、聞き流して、そのままその場を立ち去ったんだろうね。それっきり。千明が言う。「古い女みたいだったな、あたし」。
和平は黙って聞いてた。いや、違う。あんたは古いんじゃない。年取ったんだ。怒りを抱えきれなくなっただけだ。無理に戦わないだけだ。歳取るって、そういうことだろ。
でもそれを、あえて言葉にするほど、和平も若くない。だから、だた並んで座って話を聞いていた。それでいい。それがいい。
🎯 最強ママ POINT!
ウソをつかない正しさも、怒りを飲み込むやさしさも、若さを失った証かもしれない。でもな、いいんだよ。歳取ったら、無理して生きない。それが最高にかっこいいって、誰かが言っとけ。
第1話相関図・コマ④|ウソをつかない痛みと、怒れない自分を笑う59歳
千明は、ひとりごとのように和平に話し続けた。アホ部長。あの男、もういない。千明がこの業界に飛び込んできた頃から、ずっとあいつはいた。
権力だけ振りかざして、下らない噂ばらまいて、でもなぜか憎みきれなかった。若いころの千明なら、言い返してた。真正面から啖呵切って、大人げないって笑われても、ぜったいに黙らなかった。
でも今は違う。千明は最後に部長と顔を合わせた喫煙室のことを思い出す。あのとき、部長がぼそっと言った。「俺はな、アホ部長だ。アホ局長になるつもりだ」。
冗談ともつかないそのセリフに、昔の千明なら「そんなの、なるなよバカ」って即答してた。なのに、あのときの千明は、何も言わなかった。軽く笑って、黙って立ち去ったのかもね。
千明は和平に言った。「古い女みたいだったなぁ、あたし」。自分でも苦笑した。若いときは、怒りがエネルギーだった。戦うことで、自分を証明してた。
でも今は違う。怒ることに疲れた。戦うことに疲れた。無駄だって、わかっちゃった。それって、老い?いや、きっと、成長でもある。──そう思いたい。
でも、素直には思えない。無力感、諦め、そういうもんが心の底にじわっと沈殿してる。和平は黙って聞いてた。
和平も今日、ウソをつかなかった。同期の奥さんに、「温泉旅行に行ったって聞きました」って言われて、「それ、僕じゃありません」って、きっぱり言った。
若いころの和平なら、適当に笑って誤魔化してた。けど、もうそれができない歳になってた。正直に生きたい。でも、正直は痛い。
自分も痛いし、相手も痛い。63歳。ウソをつく気力も、優しさを装う余裕もなくなる歳。正直に生きたからって、すっきりするわけじゃない。
むしろ、後味の悪さだけが残る。だけど、ウソをついていたら、それもまた苦しかったはずだ。じゃあ、どうすりゃよかった?答えなんか、どこにもない。
千明も、きっと同じだ。昔みたいに怒れなくなった自分を「古い女」だって笑い飛ばしながら、でもどこかで引っかかってる。
若いころの自分は、無駄に戦いすぎた。無駄にぶつかりすぎた。いま、こうしてぶつからずに、黙って隣を歩いていられるって、もしかしたら、それがいちばん成熟した答えかもしれない。
セカンドライフ?そんなもん、設計図通りにいくわけない。正直に生きても、すっきりしないし、怒りを飲み込んでも、清々しくなんかない。
でも、だからこそ、今がある。隣に誰かがいて、疲れたな、って言って、同じく、って返して、黙って歩く。それでもう、十分だ。
千明は思ったかもしれないわね。古い女でもいい。怒れない女でもいい。戦わない女でもいい。だって、ここに自分がいて、隣に和平がいて、今日もなんとか生き延びた。それだけで、たぶんもう十分すぎるほどの勝ちなんだ。
🎯 POINT!
ウソをつかないって、清いことじゃない。怒らないって、優しいことでもない。ただ、年を取るって、こういうことなのかも。痛みも未練もみんな抱えたまま、それでも笑って「疲れたな」って言える。それが、最高の大人ってやつかも。
まとめ
恋とか愛とか、そんなドラマチックなもんじゃない。ウソもつけない、怒りも抱えきれない、でもそれでいい。
若いころに描いた未来とは違うけど、誰かと一緒に「今日をやりすごす」。その地味だけどしぶとい生き方こそ、ほんとうは一番贅沢なのかもしれない。
だってさ、未来が怖い夜に、黙って歩いてくれる誰かがいるなら──それで、もう十分なんだってきがしてきたわ。
今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
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