映画『望み』って、観たあとにずしんと心に残るタイプの作品ですよねえ。家族の「あの子は大丈夫」という気持ちと、「もしかして…」という不安の間を揺れ動くあの感覚、ほんと親目線だと胸が苦しくなるの。
今回は、石川家の視点を中心に、物語の流れを“相関図つき”で振り返りながら、家族がたどった希望と絶望の揺れをまとめてみましたよ
相関図①|石川家に漂い始めた“不安、規士は加害者?
12月17日、子どもが二人に恵まれ、家族4人で暮らす石川家の日常。高校生の長男と、高校受験を控えた妹。もうサンタクロースを信じる年ではないこともたちがいるんだけど、リビングにはしっかりとクリスマスのデコレーション。
ゆとりのある穏やかな日常がある雰囲気を醸し出してるわね。
子供たちの両親は建築家の父・石川一登と、出版関係で働く母・石川貴代美。
吹き抜けのリビングに天然石の浴室、二階へ続く階段が見える開放的な造りの家で、家族みんながにこやかに過ごす様子は「こんな暮らしっていいな」と感じさせるの。
貴代美も一登も忙しそうではあるけど、子どもたちのことをちゃんと気にかけているし、妹の雅も家族と自然に会話できていて、ほんとうに穏やかな家庭に見える。
でも、その中にどうしても“一点の曇り”に見えてしまうのが長男・規士(ただし)。顔にあざ、自室には切り出しナイフ…。
映画のタイトルとは裏腹に、今の彼の態度からはまったく“望み”が見えない。
とはいえ、この日本でどれほどの男の子たちが、規士のような日常・家庭での接し方になっているのかと思うと、決して珍しいわけではないのかもしれない。
ただ、珍しくないから平気という話ではないし、家族にとっては耐えがたい不安が漂ってしまう状況よね。
「一体この子に何があったんだろう」と思わずにはいられない。様子がおかしくなってから1か月も経たない1月、規士は家に帰らなくなってしまった。
冬休み中とはいえ高校生。親としては気が気じゃない。一登や貴代美の気持ちが痛いほど伝わる。
貴代美が送るメッセージはすぐ既読になるものの、返信は「帰れないけど、心配しなくていい」。
うーーん、これはもう既読のままの方がまだ気が楽だったかもしれない…。貴代美が心配でいら立ちながら電話したのも、理解ある親のぎりぎりの対応なんだと思う。
この親だからこそ、まだ規士も家族とのつながりを辛うじて保っているように見える。
でも、その“望み”をわずかに繋ごうとするときに限って、それを断ち切るように事件の知らせが届く。

最初は貴代美の母からの「規士が帰っていないの?テレビをつけてみなさい」の一報。
トランクに詰め込まれた人物のニュースが流れ、しばらくすると警察や週刊誌記者まで自宅にやってきた。
雅も次第に事件の情報を耳にし、不安を抑えられなくなっていく。ほんの数週間前までの穏やかだった家庭は、規士の異変をきっかけに一気に崩れ落ちてしまった。
一登は仕事もしなければならず、仕事場でも事件の深刻な情報を突きつけられる。
取引先の高山社長によると、一緒に働いている職人さんのお孫さんが被害者なのだという。
家に戻れば、放送局の人たちが家の周囲を取り囲む――まだ規士がどう関わっているのか、まったく分かっていないにもかかわらず。
被害者は花塚塗装店の社長のお孫さんだった。
相関②|息子を信じたい母と父
絶望的な状況に追い込まれていく石川家。まだ何も分かっていないのに、貴代美は必死で「規士が加害者ではない理由」を探す。
一登は落ち着けと言うんだけど、いや、親なら絶対そうなるわよ。
貴代美は「あの子は虫一匹殺せない」「気が小さいし優しいし」と、ひたすら“加害者ではない証拠”を探し続ける。一方の一登は、とにかく取り繕うように「帰ってくるさ」と言いながら、自分自身を保つのが精一杯。
そこへ規士と同じ高校の飯塚さんが訪ねてくる。規士が家を出てから出会う人すべてがストレスに感じられていた一登にとって、場の空気がふっと緩む時間だった。
飯塚さんは規士の交友関係を話し、中学のサッカークラブで背番号10番を背負っていたこと、怪我で辞めてしまったこと、そしてその頃の規士はチーム内で目立つ存在だったことを教えてくれる。
しかしフリージャーナリスト内藤がつかんだ情報では、チーム内の“先輩後輩のいざこざ”があり、規士は「ヤバい」と評され、堀田先輩が病院送りになったという話まで出てきた。
飯塚さんの話す規士とは違う印象。どれが本当なのかも分からない。
日が経つにつれて、警察の質問は規士を疑うものばかり。一登の質問には「お答えできません」。一登の辛抱にも限界が近づいている。雅も日常生活が崩れ始める。
そんな中、貴代美の母・扶美子が食事をたくさん持って家を訪れ、「かわいそうに」と寄り添いながら、「何があったとしても、たっちゃんを守る覚悟をしなさい。覚悟さえあれば怖いことはない」と告げる。
扶美子は病を抱える身だからこそ、恐れを克服した自分の方法を娘に伝えたのかもしれない。
一登もまた、施工業者の高山社長に仕事を断られ、自分の将来まで脅かされる事態に追い込まれる。もう家族が全員、あらゆるタイミングで窮地に立たされている。
そしてついに、一登は「規士は加害者ではない」と、貴代美は「生きてさえいてくれれば」と、望む方向そのものがすれ違ってしまう。
どちらが正しいという話でもなく、ただただ追い詰められていく家族を見ていると胸が苦しくなる。
相関③|追い詰められる家族3人と、それぞれの望み
極限状態の中、貴代美は「家族なんだから」と自分のことを主張する雅を叱りつけてしまう。
でもこれは完全に“言葉の綾”。雅からすれば兄は心配だけど、自分の将来だって不安でいっぱい。
これまで「この高校がいいよ」と言われてきたのに、突然「別の道を考えなさい」と言われたら、そりゃあ戸惑うに決まっている。
家族3人がそれぞれの立場で限界ギリギリのところに立たされている中、娘の部屋に足を運び、なんとかフォローしようとする一登は本当に偉いと思う。
しかし、内藤が貴代美に「規士は加害者側である可能性が高い」と情報を渡し、貴代美も「規士は加害者としてどう生きていくか」を考え始めてしまう。
一登も貴代美もついに“規士が加害者側”という認識に傾き始めたようにもみえた。追い詰められるって、こういうことなのかもしれない。
相関④|規士の残したメモと真実
一登が規士の部屋で見つけたメモには、かつて一登が規士に言った「何もしなければ、何もできない大人になるだけだ」という言葉が書かれていた。
さらに“持ち出した”と思っていた切り出しナイフは部屋にそのまま置かれていた。規士はナイフを使っていなかった。その瞬間、一登の心に確かな“望み”が差し込んだように見える。
倉橋君のお葬式に向かった一登は、「規士はやっていない」と信じて行動したけれど、真実を知らない周囲からは“加害者の親”として扱われてしまう。その不条理が胸に刺さる。
結局、規士は倉橋君を守ろうとして命を落とした。真相が明かされると、一時は一登を責め立てた人たちが申し訳なさそうに戻ってくる。
貴代美は内藤に「加害者であってほしいと思い込もうとした」と語る。ひと目でも息子に会いたかったのよね。
でも、あの状態なら、もし規士が生きて加害者として戻ってきていたら、その後の長く苦しい日々に押しつぶされていたかもしれない。
エンディングでは、たくさんの人が押し寄せたあの玄関が、何事もなかったかのように映し出されていた。
まとめ
『望み』は、家族にとっての極限状態の中で“それぞれ望みがどこに向くのか”というのが描かれたんだと思うんだけど、正直とても難しかった。
「生きていてほしい」という望みと、「加害者ではないでいてほしい」という望み。その両方が揺れながら、石川家が選んだ答えには、親としてのリアルな痛みがしっかり描かれていた気がします。
規士が残したメモやしまい込まれたナイフ。規士の望みの行方を象徴しているようで、それを彼が命を落とすまで気づくことができなかった残された家族の思いを考えると、ママとしては胸がぎゅっと締めつけられました。


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