この世の中、学びも成長も、その多くは人と人との関わり合い。今日のドラマはどんな相関の間に巻き起こるのか、そこに何が起こったのか一緒に考察してみませんか。今日の映画はマスカレードホテル。ここに描かれる主人公二人の絆はいかなるものか…
相関図①|マスカレードって何?

ホテルの名前はコルテシア東京。マスカレードってホテルの名前かと思ってしまって、思わず赤面。
マスカレードって、仮面舞踏会とか、正体を隠すことを意味する言葉なのね。
2時間ちょっとの映画の中に、目まぐるしく登場するいろんな人の顔顔顔。
この物語は、一つの殺人予告とも取れる暗号によって、その犯人を追いかけ捕まえるというのが一本の筋として描かれているのよね。
正直、1回目見終えた時、なるほど、この人が犯人だったのね。。とか、最終的に明らかになる犯人がだれをターゲットにしていたのかなんてあたりはスッと分かったんだけど、そのほかのことが全く頭に残っていなかったの。
決してあらすじが雑とかそんなんではなくて、一瞬目の前に現れて強烈なインパクトをそれぞれが残していくんだけど、それぞれの関連性については元々ないというか、一瞬で忘れ去らせてしまう…なんかそんな展開が意図的に作られていたようにも感じたの。
この映画のタイトルが「仮面舞踏会ー正体を明かさない」という言葉を冠しているように、正体がつかめないだけに、目の前に一瞬怪しくきらめいたかと思えばすぐに消えていく。。そんなシーンの連続だったような印象を受けた。
だから、こちらも意地になって、続けて3回観てみたの(笑)。正体を暴いてやりたい!って、まさにそんな感覚。
最後まで通して描かれる殺人事件の犯人追跡劇、これに直接関連しないシーンに登場する役者さんが、大御所すぎるもんだから、そのインパクトにこの映画の本筋を見失ってしまうの。
たばこのにおいがするって難癖付けて、部屋のアップグレードを狙った綾部貴彦(濱田岳さん)。時間的にもわずかな時間の登場だったけど、やっぱり濱田岳さんのインパクトが強くて、本筋に関係ないはずなのに記憶に残るもんだから、本筋を見失いそうになるわね。
でも、難癖に対して、山岸尚美(長澤まさみさん)たちが選んだ対応は、めっちゃ豪華なスウィートの提供。
長澤さんの顔からは、多少してやったり感も感じられたりして、もしかして、この仮面舞踏会の会場となっているホテルは、それ自体が、その本心を見せず、お客さんが望んでいる世界観そのものを描き出している空間なのかなって感じがした。
お客様の望みをかなえる場所というのを超えて、さらにそれを超えた出し物を繰り出してくる、そんな世界なのかな。
なんかかなり面白い。だって、綾部(濱田岳さん)は、けち臭い心で、同じようにそのホテルのこともその程度のけち臭い心をもった人の集まりとしてみていたわけでしょ。
だから、自分の姑息な言いがかりに対して、同じレベルで反応して、何か言ってくるかもしれないという警戒感で、ホテルに来るなりきょろきょろと挙動不審になっていたわけよね。完全に怯えながらよね。
でも、このホテルは、同じ土俵で戦うことは致しませんよって宣言していたのよね。
だから、スウィートを提供した。でもね、次の場面では、2万円に満たないバスローブの紛失で神経とがらせているわけですよ。
千円や2千円のお金は気にしないというたぐいの集まりではないのよね。
あのスウィート提供は、仮面舞踏会の会場提供者として、そこを訪れた人の予測を超えて楽しませてやろうという、自らの真の姿を隠す影の主催者的なものを感じるのよね。
相関②|新田浩介と山岸尚美がかぶっていた仮面
そして、このホテル、マスカレードホテル、もといコルテシア東京を訪れ、」このドラマの中でからんでくるお客さんはどなたもインパクト強いんだけど、ひときわ際立っていたのが松たか子さん扮するおばあさん、片桐瑶子。
彼女、年齢も、目が見えないという姿も偽りで、何かの目的のために偽りを演じる怪しい彼女。
でも、実は相関的には、彼女の果たす役ありはすごく大きかったんじゃないかと思うのよね。
もちろんそれは、山岸尚美と木村拓哉さん演じる新田浩介の相関。
二人は殺人予告があったために、そのホテルで出会うことになるんだけど、それぞれがそこにいる目的というのがまるっきり違っていたから、はじめはその関係がうまく回ることはなかったのよね。
尚美はホテルの意向を100%実行に移していこうとするタイプ。
ここではお客様を守るというという責任を果たそうとするのよね。
一方で刑事の新田浩介は、犯人逮捕が一番大事と考えている。
最初はね、そんなこともあって、お客様に目を向けている尚美から見たら、お客様を見ようとしない浩介に対して相当ないら立ちを感じていたの。
でも、実はそのように描かれていたのは、浩介が実際に接客をし始めたばかりのほんの一瞬に過ぎなかった。
チェックアウトで込み合うフロントで、順番待ちができないお爺ちゃんに、ちゃんと順番守ろうねって言ってみたりとかね。
でも、その次の瞬間からは、もうすでにお客様目線で対応する姿が描かれだすのよね。
もちろん、すぐさま、尚美がその姿に心動かされるわけではないけど、動かされるのは時間の問題よね。
だって、浩介の対応は、お客様をみながら、しかもホテルの人、尚美のことをもしっかりと守ろうとするんだから。
後にね、彼の優秀さを裏付けるような人、栗原健治(生瀬勝久さん)が現れて、彼の子どもの頃からの優秀っぷりも描かれるんだけど、刑事としての粗野な素振りみてると、彼こそが、まさにマスカレードの主役だったのかもしれないななんて思ったりもする。
だってね、ドラマ冒頭でのしかめっ面からエンディングで見せる、そりゃもう美しい木村拓哉さん、この変貌ぶりはまさに仮面をつけた状態から脱ぎ捨てた状態って感じなのよね。
お客様はホテルという会場で仮面をかぶり舞踏会に参加するんだけど、この新田浩介という人は、日常の中で眉間にしわを寄せた仮面をかぶり、それをまとっていることを自分自身気づいておらず、このホテルに来て山岸尚美たちと接触することで、初めて長年つけていた仮面がずれ落ちていったという感じかしら。
彼は舞踏会場で、素の自分に戻ったっていう、ちょっと変わった人だったのかもしれないわね。
一方で、山岸尚美の方は、どうなんだろ。
彼女は舞踏会場のホテルにずっといるのよね。
彼女はこんなことを言っていた。
「刑事の仕事が人を疑うことなら、ホテルマンの仕事はお客様を信じることなんです」って。
でも、彼女が言っている信じるというのは、何か罪を犯している人に対しても、「この人は何もやっていない」って盲目的に信じ込もうとすることみたい。
でも、並みの人にそんなことできるはずないわよね。
実際、こう言いながらも、尚美の心はあのお婆さんの前でブレブレにぶれていた。
彼女は、この職場で、なんかよくわからない、自分でも消化しきれないような仮面をかぶって、一生懸命その舞踏会場の一部になり切ろうとしていたんじゃないかな。
そして、彼女はそのような中でいろんなつらい経験もしてきたに違いない。
今回、このフロントで刑事を教育する役割を彼女に与えたのは、総支配人の藤木(石橋凌さん)だったわね。彼は、尚美が、ホテルにとってはとてもありがたいことだけど、かなり背伸びした仮面をかぶって頑張ってるって見ていたんじゃないかな。そ
れだけに彼女がそこで経験してきた苦労と対応力は、総支配人の目にも留まるものがあって、その他の諸先輩ではなく彼女が教育係に任命されたとかそういうことなのかなって推察した。
浩介はこの仮面舞踏会の中に立ち入ったことで、何か影響を受けた部分があったように感じたけど、尚美は、舞踏会の主催者側だったせいか、何かが変わったっていうところをあまり感じなかったのよね。見落としたかな。
でもまあ、そんな形で、この物語の中で描かれるメインの相関、関わりが今生まれ、これがこれからどんな風に熟していくのか追っていこうと思います。
相関③|過去の因果が重なった場所としてのコルテシア東京
何の因果なのか、浩介と尚美、二人それぞれの過去の因果が同じタイミングで、同じ場所で二人に降りかかってくるの。
浩介の因果、それは彼が高校生の時の因果だった。
教育実習生として浩介の高校に赴任してきた栗原健治(生瀬勝久さん)。
彼が英語の授業を行っていたんだけど、クラスの生徒たちが栗原をからかうために浩介を利用したの。
浩介は帰国子女。先生より英語の発音がよかったのよね。
栗原先生は、どうもそこで、教師を目指すという志をくじかれてしまったみたい。
その後の仕事でも、その時のことが尾を引いてしまったのかうまくいかず、心の底にうっぷんをため込んでしまったようね。
映画を繰り返し見ても、彼がなぜコルテシア東京に宿泊することになったのかわからなかったんだけど、これはやはり、過去の因果を清算するための運命みたいなものだったのかしら。
因果を清算するのは、もちろん、栗原の方ね。清算というのはたぶん、許さないっていう思いをもち続けていた人が、それから解放されるための機会だと思うのよ。
だから、きっと、彼が再び立ち直っていけるきっかけを浩介が与えてくれるんだと思う。
そして、もう一人の主人公、尚美のもとには、片桐瑤子老婆に扮する長倉麻貴(松たか子さん)がやってくる。
彼女が清算しなければならなかったのは、恋人との問題で抱えた心のキズ。その彼に会うために、彼女は1年前にコルテシア東京を訪れた。
でも、彼女は、そのホテルが定めている決まりによって、そこに宿泊する男性の部屋を訪れることはできなかった。
そして、その時の姿を思うとかわいそうではあるんだけど、ホテルの外でその男性を待つこととなってしまい、結果的に心にも体にもダメージを受けることになってしまったの。
それ以来、長倉麻貴は、その彼と、ホテルの窓口で対応を行った尚美に対して恨みを持ち続けることになってしまったの。
今コルテシア東京で起ころうとしていることは、尚美や浩介の過去の清算のためのものではないわよね。
逆に、彼らは、そこで再びもたらされる出来事に向き合うなかで、互いに共鳴する機会を得たように思うのよね。
この世界で、新たな出会いが生まれて、新しいドラマが始まっていくきっかけになっていたのね。
どんな未来がまっているのかなって、想像を掻き立ててくれるシーンはエンディングに描かれていたわね。
彼らの新しい門出を温かく見守りたい気分。
ただね、この映画を観終わって、ママの好みとはちょっと違ってたなと感じたのは、長倉麻貴が救われるシーンというのが見つけられなかったこと。
まあ、これは、このドラマはそういうものを求めていなかっただけの話よね。
まとめ|仮面舞踏会のあと、誰が何を持ち帰ったのか
ホテルで過ごす時間は仮面舞踏会に参加している時間と考えてみるんだけど、仮面を外して完全に元に戻った人っているのかしら。
新田浩介は、刑事としてホテルに入り込んだ。彼は犯人を捕まえるために仮面をかぶったつもりだったけど、結果的に外れたのは、長年自分でも気づかずにつけていた「余裕のない自分」の仮面だった。
舞踏会が終わっても、彼はもう元の顔には戻れないみたいじゃない。少し柔らかくなったまま、外の世界へ出ていくのよね。
一方で、山岸尚美はどうだったのかしら。
彼女は最初から仮面舞踏会の“内側の人”。「お客様を信じる」という言葉を掲げながら、その実、自分自身を信じ切れていなかった。
今回の出来事は、彼女にとって自分がかぶっていた仮面の重さを自覚する時間だったように見えたわ。
そして、長倉麻貴。彼女は劇団仕込みの扮装までする本気の仮面を身につけてはいたものの、それは、仮面舞踏会に参加できる類の仮面ではなかったわね。
心がやんでしまって、仮面ではない、何か違うものを身にまとってしまったみたい。
やっぱりどこかで少しでも救ってあげてほしかったなって思うんだけど、まあ、それはきっと、仮面舞踏会ではなく、別の場所で回収されるべきことだったのかもしれないわね。
今日も最後までご覧いただいて、ありがとうございます。


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