さっきまで信じていた男を、ほんの一瞬の判断で斬捨てる。これが豊臣秀吉?さっきまで、恨みつらみ、小ばかにしたようなことばかり言っていた小一郎が、一種運のうちに兄を受け入れた顔になってた。いや、でも、それはママの見間違いだった。小一郎は藤吉郎の立ち回りが恐ろしかったと言っていたの。
1話 二匹の猿

尾張国中村、小一郎はまるっきりのお百姓さんの若いいい兄ちゃんといういで立ち。
いでたちというより、生まれも育ちもどっぷりお百姓様なのよね。
その村の中で共に暮らす者たちもやはりお百姓様だから、もちろん身分の上下とか無いように描かれていると思うんだけど、持って生まれた資質というのは、やっぱり違うものがあるって感じ。
それを認めているのは直(なお)。
小一郎の初恋の相手といわれているようだけど、ここには身分の差があるみたい。
直のお父さんは、坂井喜左衛門。
この坂井喜左衛門、テロップでは中村の土豪と案内されていたわね。
土豪というのは、その土地での名士みたいなものなのかしら。
小一郎との身分の差というのはよくわからないんだけど、描かれていたように、資金たっぷりの名家に対して、何日かのちの食べ物の心配もしなければならないほどの貧しい家のものという格差はありそう。
今はまだ結婚とか意識していないのかもしれないけど、何年かたって、一緒になるとかならないとか考える年になったら、そんな格差もいやおうなしに目の前に突きつけられることになるのかな。
小一郎は村の若者の小競り合いをいとも簡単におさめてしまうんだけど、彼の天賦の才っていうのは”仲裁”能力なのかしらね。
それとも、このもの相手なら、自分の能力ならばここまでは立ち回れると見極める眼力なのかしら。
そんな小一郎の家族は母の”なか”、姉の”とも”、妹の”あさひ”。
今の境遇が境遇だから、どん底で何とか生きているという風に描かれるけど、正味のところは、根性めっちゃ逞しい感じ。
やっぱり天下を取る人と血のつながる人っていうのは、ちょっと違うんだわね。
それにしても、小一郎が兄については何か見誤っている?
兄、藤吉郎のことは嘘つきのコソ泥的に思っていたようなふしがあるんだけど。
でも見てたら、小一郎の方がよっぽどうそつきの才能に恵まれてる感じ。
盗賊に襲われた直と喜左衛門。
そこに居合わせた小一郎が今、奪われそうになっている直を助けんがために叫んだ一言は、「直は近々城にあがることになっております!」って。
とってもナイスなウソだと思うんだけど、ふつう出てこない一言よね。
でも、その嘘つく時の目がしっかりしてるのよ。
そういえば、村の若者同士のいさかいをおさめた時には、それってトンチなの?って思わせる雰囲気で、理屈に合うような提案をしてその場を収めていた。
でも、いつもいつもそううまくいくわけではなさそうね。
ここ盗賊を前にしては、思い描いた通りに事が運ばない。
小一郎のウソが、逆に盗賊のさらなる金儲けの種になりそうになったの。
彼一人で、なんでもかんでも立ち回って解決する類のドラマ?いや、史実、物語ではなさそうね。
このちょっとした窮地に登場するのが兄藤吉郎。
このドラマのタイトル、豊臣兄弟の意味、二人の連携が色濃く描かれていた場面ね。
どんな連携っていうと、兄は兄で、大ウソかましてるの。足軽大将を堂々と名乗り上げ、織田信長様がその娘を連れてくるようにとの命を受けているって、いや、あんた、今来たばかりで、小一郎の必死のウソなんか耳に入ってないでしょって思うんだけど、見事に口裏合わせで着ていたかのようなウソつきまくるの。
これでも十分にインパクトあったんだけど、ママには理解できない天下を取る人たちの思考回路が、次の瞬間描かれるの。
小一郎がね、そこに置いてあった反物十反くらいをこの盗賊に差し出すの。
足軽大将のウソの立ち回りだけでは、あの場がおさまらないって、瞬時に感じ取ったっていうこと?
そして、それをおさめるためには、何か代わりのものを差し出すことで収まるって見抜いたの?
こんなことできるかしらって、ママ的には理解不能なレベルだけど、そんなところでこの二人の大物?っぷりを実感したわ。
この場をおさめることができた時の、小一郎の顔が忘れられない。
盗賊が去ってホッとしたはず。
ボロカスに言っていた兄だけど、それでもその場を収めてくれた。
それも、自分とのコンビネーションでね。
でも、小一郎の顔がね、喜んでないのよ。
小一郎はね、今この段階では、単純に藤吉郎のことを歓迎できずにいただけ見たい。
きっと、小一郎の頭の中には、百姓だった藤吉郎が、ちょっと勘違いしたようないでたちになって戻ってきただけという風に映っていたんじゃないかな。
ところで、藤吉郎って、家族からあんな風に思われていたのかな?
頑張ったねえ..藤吉郎って。藤吉郎のことを受け入れているのは母親だけじゃない。
少なくとも弟と姉には、彼が言うこと、全部嘘っぱちじゃないのって感じで思われてるじゃない。
でも、とっても調子のいいコトぺらぺらぺらぺらまくしたてるんだけど、しゃべってる内容に脚色はあるかもしれないけど、気持ちの上で嘘はなさそうなのよね。
なんだか、ママ自身、「気持ちの上でウソはない嘘をついている」ってわけのわからないことを言っているんだけど、これも、藤吉郎たちの人たらしのせいなのかな。
なんか、口から出まかせがとっても多そうな二人に感じるんだけど、でもね、人を傷つけようとするようなウソは、ここまでのところ一つもないの。
一つもないのって言っていいくらいに、もう何回ウソをついているのかわからないくらいの嘘つきなんだけど、きっとその一つ一つのウソには彼らが誰かを大切に思う気持ちがしっかり込められているのよね。
この二人の兄弟、それぞれのすごみが最後近くに描かれていた。
横内甚内が盗賊の手引きをしていたのを小一郎はその鋭い観察眼で見抜いた。
その力量にも驚かされるんだけど、やっぱりもっとすごいなと思わせるのが藤吉郎。
つい5秒前まで、その人のことを信じていたのに、信じるべき相手ではないというのを理解したその瞬間に、もうその手はその男を斬捨てていた。
その判断力、ちょっと、尋常ではないわよね。
争わずに済むならそれに越したことはない。
これは、小一郎が言った言葉で、藤吉郎はその言葉をしっかりと胸に刻んでいた。
この人の凄いところは、そういった誰の言葉も聞き漏らさずに、しっかり心に止め刻んでいるところかしら。
久しぶりに兄藤吉郎と動きを共にした小一郎、何か兄に、恐ろしさを感じたようなの。
ところで、今回、事前の相関情報にはあまり出てなかったと思うんだけど、サプライズ的に登場のDAIGOさん演じる斎藤義龍。
彼は、織田信長に対して、かなりやばい動きをとっているようなのよね。
横河甚内は、織田家家臣。
その男を、信長暗殺のために取り込んでいたということなのかしら。油断ならない男ね。
2話 願いの鐘
今まで、この日本にこんな人が何人いたんでしょうね。
豊臣兄弟のおっかさん。「あんたらは、あのおてんと様のようになりなさい」って。
自分の子どもにそんなふうに言った人って、どれだけいたんだろう。
この国のトップになったと思った人は大勢いたかもしれないけれど、子どもにこんなことを言った人は、もしかしたらずっと少ないのかもしれないわよね。
お母さんが思い描いた子どもたちの姿こそが、豊臣兄弟の原型だったのかもしれないわね。
しかし藤吉郎さん、兄弟からの言われようときたらちょっと気の毒なほど。
ほら吹きだの、なんだのと。
お母さんだけは違う風に見ていた。
「戦で手柄を立てるということは、大勢の人を殺めるということ。あの子にそんなことができるはずない」と。
お母さんは、戦のない世界で我が子が人様のために昇り詰めていくことを願っていたのかもしれないわね。
でも、小一郎は見てしまったのよね。
兄が、さっきまで信じていた男を裏切ったと見るや、全く別の顔つきで斬り捨ててしまうところを。
そういう時代だったとはいえ、まだこの時点の小一郎にはショックが大きくて、侍への道に進む足かせになったかもしれないわね。
でも、この時期、小一郎にとっては、一つの転換期だったに違いない。
これまでずっと一緒にいた幼なじみの直に結婚の話が上がっていると知ったのもこの頃。
本人から直接聞いたの。
昔って、もうそういう年齢なのね。
ついこの前まで子ども同士で戯れていたと思ったら、もう誰かと一緒になるとかなんとか。
小一郎には家柄の差があるから「よかったね」としか言えないのよね。
直は小一郎のことが好きだった。
結婚話のあと、直もいろいろ考えたに違いない。その中には小一郎の反応も含まれていたみたい。
想像の中の小一郎も「よかったね」って言っていたんだって。
だから結婚の話を進めるための気持ちの区切りが一応ついたのかもしれないわね。
坂井喜左衛門の家では、直の結婚を前に祝宴が開かれていた。
それを陰からそっと見ている小一郎の脳裏には、いろんな思いが駆け巡っているみたい。
この“直の結婚”という出来事が、小一郎が藤吉郎の誘いに従い、侍の世界へ足を踏み出す一つのきっかけになっているかのように描かれていた。
信長は身分や家柄なんてものにとらわれないお方なのだと力説する藤吉郎。
じっとしていては欲しいものは手に入らん、と自分の進む道は自分で切り開くのだと語る信長。
お前も一緒に清須へ来いと誘ってくる藤吉郎。
この頃にはもう、小一郎の心は半分清須に向かっていたのかもしれない。
その頃、織田信長は尾張統一に向けて、岩倉城の伊勢守を攻める相談をしていた。
でも、伊勢守方は降参すると申し入れてきているのに、その書状を破り捨ててしまう。
ここに書くのもはばかられるような非情な命を、配下の武将たちに指示する信長。
続いて信長の妹・市が描かれるんだけど、その市もまた兄の戦略を肯定するかのように「伊勢守の書状はただの時間稼ぎ。尾張統一を狙っている」と言っていた。
信長は考えすぎ、と言っていたけれど、市という女性は信長の戦略にも関わる位置づけの重要人物として描かれそうね。
ところで、市と藤吉郎の関係っていったいどういう関係?って気になって調べてみたの。
わざわざ呼び出して「面白い話をして」って言うくらいだから、それなりの関係があるのかしらってちょっと期待してインターネットで見てみたんだけど……ここで特筆すべき事柄や、一言でこうでしたと言えるような決定的な関係は見出すことができなかった。
逆に、当時の結婚観というのは現代の感覚とは根本的に違っていて、あの時代を生き抜くための“すべ”みたいに描かれることもあるみたい。
きっと多くの人を束ねなければならない立場の人にとっては、そうだったのかもしれないわね。
市は信長の妹という立場もあって、兄の苦労がひしひしと伝わってくるの。
藤吉郎を呼んだのは、そんな張り詰めた気持ちを少し解きほぐしたかったから。
藤吉郎が市に語って聞かせたのが、母から昔話として聞いていた「願いを叶える鐘」の話。
この鐘を鳴らすと平和に幸せに暮らせるんだって。
市はしみじみと「そんな鐘が本当にあるのなら、鳴らしてみたいものだな」と。
そしてさっきの結婚観の話に戻るんだけど、直が祝言をドタキャンして逃げ出してきたの。
もともと祝言は家と家との契約ごとのような儀式。
その場から逃げてくるって、相当な覚悟がいるはず。
当人同士の気持ちを尊重して…なんて現代的な考え方はあまりなさそうだから、これをやらかした二人にとっては、今知りうる限りの世界では完全アウェイ状態よね。
直が面白いのよ。「小一郎、一緒に村を出よ」って。
ためらう小一郎に「五文出す、じゃ、十文出す」。
あれだけお金お金ってなってた小一郎だったけど、ついて出てきた言葉は「この村で暮らしていくしかないんだ」だった。
今、小一郎の周りにはいろんな変化が起こり始めていた。
侍の世界へ向けて踏み出すきっかけがいくつも起きていた。小一郎は今、最後の頭の整理をしているのね。
そんな時、小一郎が住む村を得体の知れない連中が襲ってきた。
多くの村人が犠牲になり、家々は焼かれ、人がそこらじゅうに倒れていた。
もうその地に居続けることは難しいと感じるほどの惨状。
絶望する小一郎と直の前に、何かに引き寄せられたように藤吉郎がやってきた。
彼がこの状況で二人にかけた言葉は「これがこの世だ」って。
このドラマでは、二人は争いのない世界を願って、侍の世界へ飛び込んでいったのかもしれないわね。


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