初めてこの映画を見た人にとっては、警察官を目指す人たちの集まりにしては露見する問題が多すぎない?と、ちょっとした違和感を覚えた人もいるかもしれませんよね。
でも、そのたくさんの事例があったおかげで、風間公親という教官がどんな人をふるいにかけ、逆にどんな人をふるいに残したのか。多数のサンプルの中から読み取れるものを、ちょっと注目して見ていきたいと思います。
相関図①|風間と出会えなかった平田と出会えた宮坂

職務質問のやり方を教わる中で、なかなかうまく対応できずにいる平田和道。
お父さんが警察官ということもあって、教官からの注意されるときの言葉にも、変なプレッシャーが上乗せされる。
教える教官は筧利夫さん演じる植松貞行。
ネット上の情報にも、なんだか陰険な性格が描かれている。
もしかしたら、彼の指導でなければ、平田のその後というのは、違う展開を見せていたのかもしれないと感じる。
彼のその授業で、同じように罵声を浴びせられたもう一人の生徒は宮坂定。
彼も、平田と同じように職質のロールプレイをさせられて、平田よりも強烈なダメ出しを食らってしまった一人。
この宮坂は元小学校教師で、当時、雪山の交通事故で警察官に助けられた経験があり、その警官への憧れ故に警察官になることを志したって言っていたんだけど、こんな気持ちの部分まで否定されるのよね。
同じように強烈なダメ出しをくらった平田と宮坂だったんだけど、その先に起こったことには大きな違いがあった。
実は宮坂は、平田がダメ出しを食らうのを見て、わざとダメなロールプレイをやったみたいなの。
このことが、平谷はさらにプライドを傷つけられるような出来事として感じられて、宮坂に対して、恨みを抱くようになってしまったみたい。
相関②|宮坂の“資質あり”と都築の“向いている”の意味
風間公親教官が、初めて彼らに対しての講義の教鞭をとることになった初日、宮坂は教場当番でという役割で、1対1で風間教官と接することになったの。
ある意味、宮坂さん、ものすごい強運の持ち主といえるかもしれないわね。
でも、運だけではなさそう。
風間教官は、矢継ぎ早に質問を繰り出すんだけど、それに対する宮坂さんの受け答え、とても見事だったの。
風間「君にとって警察学校とはどういうところだ?」宮坂「己を鍛錬する場であり、警察官としての自覚…」
もちろん、こんな答えを風間が期待しているはずはないのよね。
それを、宮坂さんは、瞬時に読み取って、自分の中に隠れている本当の想いというのを引っ張り出してきて、それを的確に風間教官に伝えるの。
彼は、警察官としての資質「あり」と教官に見られた瞬間だったのかもしれないわね。
でも、最初に彼の別の資質を見抜いたのは、例のロールプレイの時だったようなの。
あの場で、宮坂は、平田の立場を想い、できないフリをした。
それが正解だったのか不正解だったのか、その答えはどこにもないんだと思うんだけど、でも、風間教官は、彼の中に基本的に「人に対する優しさや思いやり」が流れているということを見抜いていたんじゃないかな。
ここまで見る限り、風間教官が誰を退校させ、誰を残すのかを決める線引きは、たぶん「その人がどういう人間であろうとしているのか」という部分にあったんじゃないかと思うの。
行動そのものが間違っていたり、結果だけ見れば不合格に見えることでも、その奥に“思いやり”や“他者を想う感覚”みたいなものがちゃんと存在している人は、警察官として残したい、と風間教官は判断していたんじゃないかな。
風間教官を見ていると、基本、誰のことも見捨てはしないような人に見えるのよね。
風間教官は、生徒たちを見ていても「本当はみんな、人を思うやさしさを持っているはず」と信じていたんじゃないかな。
でもその気持ちって、いろんな事情とか過去の経験とかで、心の奥に隠れてしまっていることってあるのよね。
だけど、人によっては、その“やさしさ”が心の奥の方に眠ったままになっていて、簡単には出てこないことってあるのよね。
本当は呼び起こしてあげたい。
でも教場にはそこまでの時間的余裕がない。
だから結果として、それが風間教官の中での「残す人」と「去らせる人」を分ける基準になっていたのかもしれないわね。
宮坂は、警察官を志した理由を問われ、自分を雪山で助けてくれた警察官への憧れと答えた。
風間教官は「残念だ。憧れているようでは先が思いやられる」って一蹴。
たぶん、使うべき言葉を選び間違えたんじゃないかと思うんだけど、風間教官は、選び取るべき言葉は「それではない」と伝えたかったんじゃないかな。
ママ的には、きっとそれは「人に対する思いやり」を思わせるような言葉を期待したんじゃないかと思うんだけど、どうなのかな。
ところで、風間教官、最初の授業の去り際、一人の生徒に「君はなぜ警察官を目指す?」と尋ねた。
そして彼は、「警官に色々文句があるからです」と答え、教官は「君は警察官に向いている」と告げた。
なんでなのかな~って、少し考えるんだけど、考えてる間もなく教官は立ち去って、次のシーンに行ってしまうもんだから、ここは宿題として後でよく考えてみよっと。
その彼は、都築耀太って彼なんだけど、教官が立ち去った後、クラスのみんなにこうも言うの。
「騙されるなよ」って。
風間教官が生徒に自分の胸ぐらをつかませて、その時、簡単に教官のボタンが転げ落ちたことを指して言っているんだけど、風間教官の所作に騙されるなといわれ、思いつく代表的なものは次々繰り出す「退校届」。
これも、騙しのうちなのかな。
相関③|楠本は残り、岸川は去った——選ばれた資質と選ばれなかった資質
楠本しのぶと岸川沙織。
二人の間には結構な関係が発生した。
結果的に、岸川は退校し、楠本は学校に残った。
岸川に送り続けていた5通の手紙。あれ、脅迫状みたいな感じにも思えた。
風間教官にあれ送り付けたのは君か?って問われ、動揺したした楠本さんは、まるで授業のロープレ再現のように自供した。
仲がいいので冗談のつもりで..って言うんだけど。
あれは、犯罪とは言えないところに着地させることができる出来事だったのかな。
それに、楠本さんを立体駐車場の機械に挟まれたまま、放置した岸川さん。
実態はこの表現を超えて、ちょっとやばい行動だったと思うんだけど、これについておとがめは無しで済むのかという点は、ママにはよくわからないこととして、一旦おいておかせてね。
ただ、関心があるのは、なぜ、楠本は学校にとどまり、岸川は去ったのか。
この二人の関係には、幸いなことに風間教官が関与することができたのよね。
二人がそのようになったのは、風間教官の思惑も大きく影響していると思うのよね。
つまり、楠本は「警察官になるべき」人物。岸川は、「なるべきではない」人物。
岸川が「なるべき人」ではない理由は、風間教官が楠本に語った言葉の中にあったように思う。
楠本は、なぜ岸川が自分にこんなことをしたのか尋ねた。
風間教官の答えはこうだったの。「岸川は、楠本のことを信頼して、依存していた」って。
依存というのが、きっと風間教官からしたら、警官になるべきではない「適性の欠如」だったんじゃないかしら。
依存というのはいわば「クレクレ君」状態よね。
あーしてほしい、こうしてほしい、こうであってほしいって。
これは、風間さんが思いえがく警察官のあるべき姿とはかけ離れているんじゃないかしら。
では、一方で、脅迫状まがいの手紙まで出していたような楠本が、なぜ学校に残っているのか。
彼女は、間違いを犯した。
岸川さんのことを自分の彼氏をひき殺した犯人だと思い込んでしまった。
一応、彼女のなりの根拠はあった。
彼女は色についてのエキスパートで、車の色と車種が一致していたと自信をもって考えていた。
彼女は、結果的に誤認し、さらに誤った行動に移ってしまった。
でも、彼女の中には、彼を思う愛のようなものが風間教官には見えていたんじゃないかなって思う。
自分のためではなくて、無念にもこの世を去らなければならなくなった彼のことを思ってのものだったということなのかな。
ママ的には、その点はちょっと、うーーん、どうなんでしょう~って少し疑問ではあるんですけど。
駐車場の機械に挟まったままの楠本さんに、風間教官は例によって「退校届」を残していった。
ここまでくると、風間教官の「退校届」は、何かの儀式みたいなものなのかなって感じがしてきた。
「退校届」を手渡されても、まだ学校にいる人はいるし、それがまさに、都築さんが言っていた「みんな騙されるなよ」っていうことなのかしら。
「退校届」を受け取ったからといって、即座にやめるなどということ考えるんじゃないぞって、意図的ではなかったにしても、みんなが少し考える余地を残してくれた言葉だったかもしれないわね。
相関図④|日下部と樫村──“調達屋”と利用者、そして退校届の行方
日下部准と樫村卓実。調達屋とそれを利用してしまったもの。
風間教官は、例によって、日下部に退校届を手渡した。
教官は、日下部さんを退校させるのか。それとも、彼の懇願を聞き入れて、退校処分とはしないのか。
だいぶ判断基準は読めてきた。
日下部さんは、家族のことを考えている。
家族の期待に応えようとして、間違いを犯してしまった。
まあ、つきつめると、家族のためなのか、自分の保身なのかってよくわからないところもあるんだけど、風間教官的には、様子を見るというよりは、彼は愛に基づいた行動をとれるようになると信じることができたんじゃないかな。
後編に向けて、教場の中で拳銃を作ろうとしているような生徒が現れたりと、明らかな事件性を伴った出来事の発生が示されるんだけど、風間教官の素性など含めて、また後編の中で考察を進めていきますね。


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