『竜とそばかすの姫』。すずが歌えなくなってしまった理由や、竜に特別な感情を抱いたワケ、そしてしのぶとの微妙な距離感…気になってくると止まらない作品です。
今回は、U(ユー)の世界と現実世界が交差する中で、すずがどう変わっていったのかをたどってみました。”
相関図①|すずはなぜ歌えなくなってしまったの?

なんかいきなり取説を読むようなオープニング。仮想世界への登録を促される。その仮想世界というのはU(ユー)というのね。
そして、私の分身と言えばいいのかな、仮想世界での分身たちのことをAs(アズ)。自分の生体情報をスキャンして、この仮想空間でその生体がもつポテンシャルをそこで具現化してくれる…そんな感じの理解でいいのかしら。
確かに、自分の中のポテンシャルがその世界で花開き、それがこの体や心の方に伝わってくるんだとしたら、それはもう一つの自分が生きていく世界って呼んでもいいのかな。
何となくだけど、ママ的には、この肉体というのも、何かの結果がこの肉体のどこかを通じて、体、或いは心のどこかに伝えられてくる、そんな機能を担っているような気がするの。
その繰り返しが日々の生活というような理解ができなくもないかな。仮想世界というのも、その世界での経験が、この肉体を維持して、何かを伝えてくることができるんであれば、このオープニングが言うように、もう一つの世界を生きよう!っていうのも、なんかあり得るような気がするのよね。
仮想世界から現実世界に場面転換して登場するのが鈴ちゃん(内藤鈴)。
17歳の女子高校生のようね。お父さんはすずちゃんに語り掛けるんだけど、鈴はどうやら距離をおこうとしている。
なんでだろ。お母さんとの思い出は、鈴にとっては大昔の話。鈴はお母さんと大いに戯れ、お父さんはそれをそばで見ているって感じだった。
一人っ子の鈴にとって、お母さんはお母さんであり遊び友達のようでもあるの。生活の全てはお母さんとともにあったっていう感じね。
鈴のお母さんなんだけど、なんだかすごく伸びやかな感じがするの。家族でピクニックに行ったのかな。澄み渡る穏やかな川のようなところを泳ぐお母さんが描かれるんだけど、鈴のもとから向こうに泳いでいく姿が、なんかとても透明感を伴っていて…なんか別の世界に行こうとしているようにさえ見えてしまう。
Uの世界へすずがいざなわれた。促されるままに携帯を操作すると、すずのAs(アズ)、つまり仮想世界の中でのすずが生成された。
その見た目は、クラスの人気者ルカに似ているんだけど、目元にはすずと同じようにそばかすを象徴するかのようなドット柄が。
「ボディシェアリングしますとか」言ってくるんだけど、それ結構怖くない?視覚が制御下に入るとか、その他の認知機能とか手足の感覚までもが制御下に入るって。
私がすずなら、迷わず慌ててキャンセルボタン連打だわ。でも、すずはそのまま行っちゃったの。
説明を文字通りに解釈すると、たぶん、向こうの世界での出来事は、今この現実世界で感じるのと同様の感じでこの体が受け取るはずよね。
この世界ではこの体が伝達の機能を担っているけど、Uの世界に切り替えたら、この世界の体は眠りにつくというよりも、何かを感じ取ろうとする意識がそこに集中するという感じかしら。
Uの世界の体、つまり、As(アズ)が代わりの体として体験や感覚を心の方に伝えてくるという感じ?
そして、Uの世界の体は、元々の生体がもつポテンシャルをフルに発揮することができるようになる。
すずのAsであるBell(ベル)は聞くものを魅了する歌声を発することができる。そう、すずはお母さんの死後、歌声を失ってしまっていた。
でも、もともと、お母さんと歌うのが大好きだったすず。生体は、見事な歌声を発声するポテンシャルを持っていたのよね。
聞くものは不思議な曲と言っていた。
そういえば、すずは、お母さんから携帯に鍵盤を呼び出して、自分で曲を作っているようにも見えたわね。
人を魅了する歌声と曲を生み出すポテンシャルも持っていたのかもしれないわね。
ここでは、すずの元の肉体が目覚める形で、すずの意識は元のすずの意識に戻っているように描写されていたわね。
すずは、2つの世界があるということをまだ理解していないみたい。Uの世界から戻って、最初に思ったことは、「世界なんて、何も変わらない」だったの。
すずにとっては、夢の中の話のように感じられたのかな。夢なら目覚めたら終わり。しかも、夢の中の出来事は、自分がもつポテンシャルとかそんなこととは無関係よね、きっと。
それに、夢の世界は、自分の意識だけで成り立っている可能性が高いように感じるんだけど、Uの世界の設定は、おそらく、ほかの人との関わりが出てくるのよね。
他の人との関わりが出てくる場所、それは、ある意味現実世界。ただし、2つ目の現実世界と呼んでもいいのかもしれないわね。
でも、「やっと歌えた」とも言っていたから、2つ目の世界になじむのもすぐのような気がするわ。
BellはUの世界で、瞬く間に超人気者になってしまう。それまでは、Peggie Sueというシンガーがカリスマ的存在だったみたい。
でもね、Bellの出現に対して「あんな子全然たいしたことない」って。了見せま!
でも、Bellの歌を聞いた多くの人たちが、「自分のためにうたってくれているような気がする。なぜ?」って不思議な感じを覚えているの。
それは、きっと、Bell、いや、すずのポテンシャルの中には、すずの母が人のためを思って行動するってマインドが根付いているからに違いない。でも、すずは、その思いにふたをしようとした。
彼女の歌声は、母と同じポテンシャルを秘めていた。鈴の母も歌がとてもうまかったらしいの。ウィキペディア情報だけどね。すずの母は、誰かのためを常に思っていた。
だから…増水した川に入り、取り残された子を救い、自らの命を絶った。すずにはそれが理解できなかった。
なぜ、なぜお母さんは私ではなく、知らない誰かを助けて私のもとをさっていったのって。自分の中にも根付いている、誰に対しても分け隔てなくやさしくするという心の中のポテンシャルに蓋をしてしまったんだと思うの。
そして、彼女は歌うことができなくなったんだと思う。
でも、Uの世界は、生体がもつポテンシャルを引き出してくる世界。すずがそのポテンシャルを否定しようが隠そうが、Asの世界ではそれが顕在化する。
そして、彼女はUの世界で歌声を取り戻し、そのことがきっかけで、彼女は母の思い、誰かれ分け隔てなく親切にするというマインドに気づき、この現実世界でも歌声を取り戻していったんじゃないかと思うの。
ここはちょっと先走りだけど、彼女は、エンディングまでに歌声を取り戻すの。でもね、Bellの驚異的な人気は、ヒロのプロデュース手腕とか、彼女のお陰なのかなんなのか、ルカに似たビジュアルなんかも手伝ってて、すず一人のポテンシャルという訳ではなさそうなのよね。
何億というファンを前にしたコンサートが開催されるんだけど、それもヒロのプロデュースがあってのものなんでしょうね。一人で生きているわけではないというのも、現実世界に似ているのよね。
相関図②|すずが竜のことを気にするのはなぜ?しのぶにすずが聞きたかったことって何?
ところでタイトルにもある竜、これはUの世界の存在だったんだけど、なぜかすずはこの竜がとても気になる。ネットに考察とかを探してみるんだけど見つけることができず、ママ的考察はこんな感じ。
竜がBellたちのコンサートをやっているところに突然現れたんだけど、そこは、ヒロのAsが言っていた通り、あの空間に無理やり入り込んできたようなの。つまり、ネット上でコンサート開催を案内し、申し込みやら招待やら、そういう手続きがふまれた空間ということなのかなと思うの。ある種の自分たちのプライベートな空間ということかな。
そこに無理やり入り込んできた存在だから、もちろん気になるのは当たり前ということかな。でも、Bellが気にしているのは、あざだらけのあの体。Uの世界は、生体の特徴を具象化するのよね。つまり、そのオリジナルである人自身があざのようなものを抱えているということ。
ベルのオリジナルであるすずは、お母さんを突然誰かよその子に奪われてしまったというような被害妄想から、誰かの助けになるという思いを現実世界では封印してしまった部分がありそうというのは前にも言った通り。
だけど、Uの世界では、オリジンが元々持つポテンシャルを引き出すから、人を助けなきゃって思いが強まっているに違いない。
その感性が、目の前を通り過ぎようとしているあざだらけの体の主を無視することを許さなかったんじゃないかな。
Bellは「あなたは誰?」と問いかけた。おそらく、そんな風に声をかけてもらうことがなかったんじゃないかな、この竜のオリジンは。
いや、正確には、声をかけてくるものはいても、それは形だけ。誰も本気で助け出そうなどしてはくれなかったのね。
それどころか、暴れざるを得なかった理由など気に掛けることもなく、ただやみくもにその動きを平定してしまおうとする人々の態度。
うわべだけしか見ることができないこの世界。本当の理由など知ろうともしない。それでも、その場を平定することを正義とする世の中。
そんな世界に、竜は見切りをつけていたようにも思える。すずと付き合いのある、ある意味心あるヒロちゃん(別役弘香)だって、すずとは違い、暴れる竜の正体を暴いてやる!っていきり立っているんだから。
物語の中で見ると、すずのようでありたいと思う人であっても、いざ現実の世界を見るときには、うわべだけしか見ることができなくなってしまうというのは、よくあることなのかもしれない。
ずっと先のシーンで「しのぶ君、こんなわたしのことなんかもうきにしなくていいんだよ」って、カミシン(千頭慎次郎 ちかみしんじろう)がカヌーから上がってくるのを待っていたしのぶ(久武忍)にすずが言うの。
その1分前に、すずはしのぶにずっと聞きたかったことがあるっていうんだけど、いったいなにがきたかったの?映画の中ではたぶん明確には言われていないんじゃないかと思うんだけど、きっと、「どうしてあの日、私を助けてくれたの?」「あの事故のあと、ずっと私のことを気にかけ続けてくれたのはなぜ?」って、そんなことを聞きたかったんじゃないのかな。エンディング近くでその答えは明かされたわよね。しのぶは、すずのお母さんの代わりを演じてくれていたんだって。
相関図③|なぜ竜はジャスティスの前からBellを救い出した?
竜はジャスティンに囲まれたBellを救い出すんだけど、なんで助けたんだろ。Bellが歌おうとしていたところに無理やり入り込んでは来たものの、Bellとの接触は多くはなかった。
Bellの方は、竜を助けなければって直感で感じ取ったんだと思うの。お母さんが、川の中ほどに取り残された子供を見捨てることができなかったように。
生体の中のポテンシャルが、たとえ現実世界では蓋をされていようと、このUの世界では極限にまで引き出されるということ。
でも、竜はなぜBellを助けたのか。竜のオリジンの生体には、どんなポテンシャルがあったのか。これはのちに描かれるけど、暴力をふるってくる父親から弟を守るというマインドが根付いていた。
弟にとって、兄である竜のオリジン恵はヒーローだというの。きっといついかなる時にも弟を守っていたのね。
だから、竜にとって「傷つけられそうになっている弱い存在を前にしたBell」は、弟を守るときと同じように、“放っておけない守るべき相手”として映ったんじゃないかな。つまり、もともと備わっていた「守るポテンシャル」が、ジャスティンに囲まれたBellを見た瞬間に発動したから、竜はあの場からBellを救い出したんだと思うの。
彼には、自分を慕ってくれるものを守るという特性があるのかもしれないわね。
その特性が、Bellの寄り添おうとする気持ちを敏感に察知したのかもしれないと想像するの。
Uの世界って、現実世界で今起こっていることをリアルタイムで反映してくるところがあるみたい。
竜の背中に新たなあざが浮かび上がってくる。まるで、殴られたときに痛みで火が吹くようにその部分が光り、そしてそのまま新たなあざとなって沈着する。
Bellはそれを目の当たりにしてしまった。竜は、その姿を見るなという。
でも、Bellであるすずは、もう竜が誰なのか突き止め、助けに行かなければならないという衝動にかられたかに見えた。
でも、現実世界のすずは、少しそのことから距離を置きたがっているみたい。現実世界で彼女がもつポテンシャルを覆い隠している蓋は、まだ完全には開き切っていないってことなのかも。
でも、徐々に徐々にマインドが解放されかけているのが描写されている。彼(恵)を守ってあげなくちゃって、すずが自宅の庭に佇んでいる。
でも、彼女の心を閉ざした蓋がまだ完全に開かれていないのは、そこにたまたま現れた父との距離に現れていたように思う。。
でも、いろんなことがこの後解放されていく感じ。カミシンに自分の思いを伝えたルカ。その間を取り持ち、気持ちが盛り上がったのか、そこにやってきたしのぶに、何かを伝えようとするすず。
ずっと黙ってたことがあったって。それって、「好きでした」ということなのかな?でも、その言葉を遮ろうとしたわけではないんだろうけど、タイミング悪く(?)、しのぶはすずに、おまえBellだろって。
ところで、ルカがまた面白いこと言っていたわね。しのぶは、なんだかすずのお母さんみたいだねって。これって、しのぶの母性?いや、これはすずが生体に秘めた人を助けたいというポテンシャルの類とはどうやら違うみたいね。
エンディング間際にしのぶがこういうんだもん。もうお母さんの代わりをしなくてもいいんだよねって。しのぶは本当はお母さんではなくて、しのぶとしてすずに接したかったんだろうね。
でも、お母さんを失って、泣いてばかりいるすずを見て、お母さん役を引き受けた…?6歳の男の子が?高校生になるまで?!信じられん!
これ、究極の人助け?すずのママに通じるものあるじゃない。
いや、今はそっちをかまっている場合じゃない。竜が大変なことになっている。Uの世界で完全に追い詰められ、それはすなわち、この現実世界の苦しみから解放されようともがいたUの世界においても、また現実世界と同様の苦しみを味わっているということ。
このオリジンにもう生きていく世界がなくなってしまう。すずはそんな風に感じたのかな。
オリジンを探さなければ。彼女とヒロちゃんは、Uの世界から聞こえてくるBellの歌声に気づく。ベルと竜しか知らないはずのその歌を歌っているのは… 知(とも) 。すずがモニター越しに知といっしょにいる竜のオリジン恵を見つけた。
相関図④|すずとしのぶは、どうして恵を救うことができた?なぜ、父親との関係が修復された?
親から暴力を受ける恵(けい)。それを助けたい一心で、コンタクトを試みたすず。
でも、生身の鈴は、恵に認識してもらえない。彼が心許したのは、まだU世界においてのみなの。
何とかその彼を助けたいすずやしのぶが選択した方法は、生身の姿をUの中で晒すこと。
そして、今すずは、かつての自分の母親と同じように、自らの命を顧みず、Uの中で素顔をさらすことを決意した。でも、その背中を押したのは、しのぶ。まるで、すずの母親のマインドをそのまま受け継いだかのような決意をもって、大好きなすずに、自らをかえりみるなと言いながら彼女の背中を押した。
すずは、しのぶ、いや母の助けを借りて、母がもっていた心の中の優しさを自らの心の中でも開放することができたみたいね。
そしてそのマインドは、周りにいた人すべての人の心を動かした。母と同じマインドをもったすずが父を受け入れたのは、当然じゃないかしら。だって、母はその父を愛していたんだから。
まとめ|
『竜とそばかすの姫』は、仮想世界と現実世界が交差する中で、人が本来持っている“優しさのポテンシャル”がどんなふうに花開くのかを描いた物語っていうふうに心に残った。
すずが歌を失った理由、竜に惹かれた理由、しのぶへの想い…その全部が一本の線でつながっていきます。U の世界で取り戻した“誰かに手を伸ばす力”が、現実のすずの世界も変えていったんだろうなあと思うのです。
現実の世界にUの世界はないのかもしれないけれど、心に耳を傾けてみると、Uですずが体験したような想いが湧き上がってくるような、そんな気もしてきました。
今日も最後までご覧いただいて、ありがとうございます。


コメント