エピソード1 伝説の熊撃ち

明治時代の北海道。北海道にはアイヌが残した莫大な金塊が眠っている。
日露戦争で生き残り、戦争で失った幼なじみ寅次の想いを叶えるため、杉元佐一は網走監獄を脱獄した囚人の体に彫られている刺青を集め、金塊のありかをつきとめようとアイヌの少女、アシㇼパを相棒とすることにした。
アシㇼパも、金塊と無縁ではなかった。
父はなぜ殺されなければならなかったのかを突き止めるため、監獄で生きてるという犯人に迫ること、金塊を見つけることで父の敵を討とうと杉元と行動を共にする決心をしていた。
二人は刺青探しの旅に出るが、それは、同じく金塊を求める第七師団鶴見篤四郎や土方歳三たちとの争奪戦になっていく。
谷垣源一郎。彼は第七師団だったんだけど、前作でアシㇼパを追っていた時、彼女を守らんと現れた白いオオカミレタㇻの攻撃を受けて、その姿に魅了されてしまったの。
今、彼は軍を離れて、またマタギとして生きていくことを思い描いているみたい。
実は、オオカミに襲われた後、谷垣は二瓶鉄造という男に助けられ、その後行動を共にするようになったんだけど、彼こそが伝説の熊撃ちなのよね。
実は、彼も刺青囚人の一人だった。
彼が脱獄した理由は、山に帰りたかったから。
自分は獣たちと同様に自然の一部で、その中で生き、いかされ、そして、そこでまた、けものとして死んでいくという生きざま追い求めていたから。
杉元とアシㇼパは、狩猟をしながら刺青囚人を追っている。
杉元はまだ狩猟というものに慣れていないみたいね。
戦争では何人も殺めた杉元だけど、それは敵が自分を殺そうとしてきたからだと言っていた。
でも、自分に向かって突進してくる鹿を撃つことにはためらいが出た。
必死で生きようとするその姿が、まるで自分自身のように見えたからだという。
考えてみれば、戦場で向かってきた相手も、きっと同じように必死で生き延びようとしていたはずよね。
杉元は、ぎりぎり自分がやられる間際まで、相手を撃つことをためらうような人だったのかもしれないと感じた。
生き延びるためにそうせざるを得なかっただけで、本質的には命を軽く扱える人ではない。
だからこそ、狩猟という“自分が生きるために命をいただく行為”には、まだ覚悟が足りなかったのかもしれないわね。
アシㇼパにとって狩猟は、生きるために絶対に必要な営み。
命をいただく責任を引き受ける覚悟がなければ、山では生きていけない。
杉元は誰かのためなら不死身になれる。
でも自分のために命を奪うとなると迷いが出る。
アシㇼパが言う「覚悟がない」とは、命をいただく責任を“自分のため”として引き受けられるかどうか、という意味だったのかもしれないわね。
そういえば、谷垣は二瓶と行動するようになって、軍を離脱するつもりにもかかわらず、軍帽をかぶったままなのよね。
なぜなのかと問う二瓶に谷垣が答えるでもなく、戸惑ったようにこんなことを言っていた。
ある目的があって軍に残った。故郷の秋田を捨てるつもりだったって。
ネットの情報によると、谷垣が軍に所属した経緯にはこんな過去があったらしい。
自分の妹は谷垣のマタギ仲間と結婚していたが、その家が全焼してしまい、妹が焼死体で見つかったらしいの。
その体には、刃物で刺された跡があり、谷垣は、義理の弟がやったもの考えた。
義理の弟は第七師団に入隊したと知り、そのあとを追ったんだけど、戦地で重傷を負ったその弟から、妹が命を絶ったいきさつを聞かされたの。
義理の弟は仇でも何でもなかったという事実に愕然としてしまったみたい。
彼が、二瓶に「山の中に入ることによって、体の中の毒のようなものが抜けていくのを感じた」と言っていたけど、その毒というのは、彼が義理の弟を仇と思い憎んでいた時に蓄積されたものだったのかな。
それに、戦争で自分が殺した相手には、弔いの思いを向けることもなかったって。
谷垣は、故郷を捨て軍に所属したけど、そうした理由は自分の誤った思い込みによるものだったため、今、居場所を失ってさまよった感じになっていたのね。
二瓶は、谷垣に、オオカミを仕留めたら故郷に帰れと言っていたけど、自分自身では居場所を決めることができずにいる谷垣を気遣ったのかな。なんか、二瓶ってとってもいい人じゃないの。
二瓶は網走刑務所に収監されていた過去があったけど、それはアシㇼパさんの説明によると、猟師からモノを奪っていく悪いやつらがいて、それがたまたま二瓶を狙ったものだから、逆に返り討ちにしたみたいなの。
でもね、さらに、二瓶らしいなっていうのが、その奪われそうになったものというのは、金品じゃなくて、獲物のことだったらしいの。
推測するに、二瓶にとって、ほかの金品よりも、獲物の方がずっと大事だったに違いない。
だって、命をいただき、受け継いでいくべき敬うべきものなんだから。
ただの金品強奪なら、二瓶は何もしなかったかもしれないわね。
なんか風貌やものの言い方なんかは、一見狂人のように見えて、実はものすごく芯があって筋を通そうとしていた人みたい。
谷垣への言葉を思い出すと、やっぱりこの人、いい人のように感じてしまうのよね。
でも、悲しいかな、今、その猟師二瓶がターゲットにしていたのが白いオオカミレタㇻ。
こうなってしまうと、杉元たちとの衝突は避けられない。それに、彼の体には例の刺青が入ってしまってるし。
レタㇻをおびき寄せるために、彼は、アシㇼパに銃口を向けてしまっていた。
ちょっと残念。
さすがにこれでは、いい人とは呼べないわよね。…やっぱり狂人…自分とレタㇻの戦いを、けものとけものの戦いって言っていた。
残るのはどちらか片方のみ。
猟師としてのよくわからないこだわりで銃口をレタㇻにむける二瓶。
アシㇼパを助けるために、その銃口に向かって突き進んでいくレタㇻ。
物語的には、どちらに勝利が訪れるかは明白だわね。


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