2015年の映画『HERO』。
前作ラストで描かれた久利生と雨宮のキス、その“続き”を期待して観た人も多かったんじゃないかしら。
でも物語は、恋のその先ではなく、外交という巨大な壁と一人の証人の死から始まるのよね。
あのキスは何だったのか。そして再び同じ事件の前に立つ二人の関係はどう変わったのか。そんなことを緩ーく追ってみたいと思います
相関図①|久留生と雨宮、前作ラストのキスはどこへ消えたのか?
2015の冒頭を見ていて、あれ?ってなるのは、「続きがない」ことそのものというよりも、むしろ、2007年のあのキスって、そもそも何だったのよってところに、もう一回立ち戻らされる感じがするのよね。
だって、恋人の続きが始まるわけでもないし、別れましたの説明もない。ただ、検事になった雨宮と、相変わらずの久利生が、同じ立場で並んでいる。
それだけが静かに提示される。ここで、観てる側の頭の中にはどうしたって、バーのあの場面がよみがえるわけよ。
翻訳機が出てきて、「彼女を離してはいけません」と表示されて、そのあと久利生が「約束します。離しません」って言って、翻訳機にも同じ言葉が出て、沈黙があって、キス。
告白はないし、「付き合おう」もないし、未来の話もない。
ただ、その場の空気の中で、あのキスが起きる。あれを見たとき、多くの人が「あ、この先があるんだな」って思ったはずなのよ。私も思った。勝手に思った。
でも、よくよく考えてみると、映画はその先を一言も保証してないのよね。
あの直前まで二人がやっていたのは、大きな事件を一緒に追い続けることだった。
立場の違いでぶつかりながらも、同じ証拠を見て、同じ結論にたどり着く。
その過程って、ものすごく濃い時間なのよね。
緊張もあるし、衝突もあるし、集中もあるし、最後には達成感がある。
人ってね、そういう時間を共有した相手に対して、ものすごく強い結びつきを感じることがあるみたいね。
恋愛感情と似た熱を帯びることもある。吊り橋効果なんて言葉もあるけど、あれは、状況が感情を増幅させるっていう、よくある話。
だから、あのキスが恋愛じゃなかったと言いたいわけじゃないの。
ただ、あれは“日常の中で静かに育った恋の告白”というよりも、“共闘のピークで一気に高まった感情の帰結”だった可能性もあるんじゃないかなって、2015を見ていると何となく感じるのよね。
だって、あのとき二人の間にあったのは、乗り越えるべき壁であり、共有する緊張であり、同じゴールだった。
でも2015では、その構図が変わっている。
雨宮は事務官ではなくなり、検事として並ぶ。共闘の形も変わる。
つまり、あのキスが生まれた“条件”は、もう同じじゃない。
そう思うと、「あの瞬間の感情は、あの状況の中で生まれたものだったのかもしれない」という理解に至るのよね。
共に戦っているときの距離感と、日常に戻ったあとの距離感は、同じとは限らない。
あのとき確かに高まった感情があったとしても、それがそのまま形を変えずに続くとは限らない。
ところで、雨宮舞子は大阪地検南場支部の検事として、担当する恐喝事件の証人として三城紗江子との接触を図ろうとしていたんだけど、その彼女が突然になくなってしまったの。
事件の証人の死亡、担当検事からしたら、誰かに狙われ殺害されたに違いないと考えたとしてもしょうがないともいえる展開よね。
でも、そのなくなった場所というのが、東京で、しかもその死亡事故をあの久利生公平が担当していると聞いてしまったもんだから、もうその件とは関わりたくないって言いだすの。
ちょうどこの直前、雨宮が別件で取り調べしていた女性、自称占い師から「あなた過去の男との関係がぐちゃぐちゃになる」的なことを言われていたもんだから、久利生との過去が彼女の中にも一気に思い出されたのかもしれないわね。
でも、「ぐちゃぐちゃ」って何?
やっぱり、自分の想いに対して、久利生の想いは同じレベルではなかったにもかかわらず、キスに至ってしまった、そのねじれみたいなものが彼女の中でぐちゃっとした思いになっているのかもしれないわね。
ママ的に言わせてもらえば、久利生の気持ちは、純粋な恋愛感情ではなかったってこと。
最高の相棒と、ある事件を通して勝ち得た達成感。
彼らがその感情を維持し続けるためには、そこに事件が必要だったってことじゃないの?
でも、今は、お互い離れたところで、別の事件を扱っていたんだものね。少なくともこの8年間は。
被害者の三城さんは、ネウストリア公国大使館からとびだしてきたところ、運悪く車にはねられてしまった。
大使館の中で何があったのかしら。
当然、久利生たちも同様の疑問を持つんだけど、そこは大使館。
治外法権だのなんだのって、日本の事件とは塀一枚で完全に隔絶されているのよね。
被疑者である車を運転していた男性は、自らが轢いてしまった女性は自分の目の前に飛び出してきたって言うんだけど、なぜ女性は大使館から飛び出してこなければならなかったのか、何としても知りたいところよね。
??いや、この情報、要るのかな?飛び出してきたっていう状況の確認だけでは、そのドライバーの男性を救うことにはならないのかな…
三城は大使館から飛び出してきた直後、車にはねられる。運転していた男性は「急に飛び出してきた」と証言する。ここまでは交通事故の構図。でも問題は、その直前に三城がいたのが“大使館の中”だということ。
大使館。治外法権。
塀一枚で、日本の司法が踏み込めない場所。
久利生が追っているのは、単なる交通事故ではなく、「なぜ彼女は飛び出してきたのか」という一点。その背景に何があったのか。
大使館の塀の前で立ち尽くす雨宮たちを前に、久利生の思考はちょっと違うのよね。
大きくは変わらないところが魅力かな。
大使館じゃ無理かもな~って言いながら、決めつけずに一応当たって砕けろって突き進むところがいいのよね。
ここで突き進んだら、どこかの誰かから怒られるだとかなんだとか、そんなことはどうでもいいコト。
自分が何をしに来ているのかを常に忘れないのよね。
彼がやっているのは、三城さんと、三城さんを車ではねてしまった男性を裁く前に、ちゃんと何が起こったのかを確かめること。ぶれないのよね、彼は。
それに対して、この大使館との公式協議を控えた外務省、なかなか大変なお仕事っぽい。
調整を任されている松葉圭介、周りで補佐している人たちの言葉「今の大使はおかざりだ」とかなんとか、ぶれぶれの身内の言葉が逆に彼を揺さぶって、いらぬプレッシャーをかけられているようにも見える。
久利生の周りにも、ブレブレはたくさんいるんだけど、久利生はブレない分、その周りの人たちも、いざとなったら腹決めて、久利生との一体感を強めるのよね。
相関②|ネウストリア公国大使館という壁
HERO2015の最大の障壁は、ネウストリア公国大使館。
ここで久利生が取る行動が、いかにも久利生なのよね。
“入れないなら、外から崩す”。
料理は国境を超える!って。
なるほど、なかなかの発想(笑)。
でも普通そんなに簡単にいかなさそうなところで、いきなりターゲットのネウストリアの人たちに出会えるのも久利生やそのチームの引きの強さよね。
ところで、ずっと気にかかっていた雨宮と久利生の今回の関係。
前作のつづきの要素が消え失せているのには、もう一つの理由があったみたい。
結婚前提のお付き合いの相手、矢口繁之という人がいたのね。なるほど、そういうことね。
雨宮、8年ぶりの久利生との再会も、8年という月日に押し流されて「久利生を追う」という流れを失っていたみたいね。
そもそも、仕事の関係でも、彼女は久利生の背中を見て追う位置にいたわけだし、今は、その関係もないんだものね。
雨宮がホテルからその彼に電話していた時の表情が、なんか、微妙な雰囲気を漂わせていたのよね。
まあ、エンディングを見てから思い返せば、久利生への想いを始末しようとしていた…そんな時間だったのかなって想像するんだけど。
ぶれない久利生に対して、雨宮は、結構ブレるのかな。
それとも、8年もの間、久利生に対する想いをくすぶらせ続けたという意味では、ブレない女雨宮と呼べるのか…
何か知らぬまにネウストリア料理のお店の人と親しくなってる久利生たち。
ネウストリア公国大使館の人がお店に入るなり、早々にアプローチ開始。
料理は国境を確かに超えて、ペタンクにつながったの。
ペタンクつながりで、大使館員3名とお近づき。
そこから、三城さんと一緒に映っていたネウストリア人の正体を聞き出そうと頑張ったんだけど、早々とんとん拍子という訳にはいかないわよね。
でも、きっとこの努力はどっかで報われるはず。
でも、久利生が信号待ちをしていた時、突然に背中を押されて危うく車にひかれそうになった。
ネウストリア人を追ううちに、もうすでに、久利生もやばいところに足を踏み入れてしまっていたということ?
ネウストリア公国大使館員との接触で、外務省に睨まれたのも怖いけど、交差点で背中押される方がよっぽどやばいわよね。
でも久利生は、そんなことはもとより、外務省からの圧力だって、どうでもいいコトなの。
久利生が追っているのは、人ひとりが命を失ってしまった事故、いや、もしかしたら事件の真相。
人ひとりの命の重さをまともに感じ取ることのできない外交官に対するいら立ちは、マックスかもしれないわね。
そして、久利生、交差点での危機に続き、今度はトラックが突っ込んできた。
病院に運ばれた久利生のもとに、雨宮が。昨晩一報を聞きつけて、慌てて大阪から東京、久利生のもとに駆け付けた雨宮。
やっぱり、過去のバディというだけの関係じゃないわよね。
でも、久利生が狙われたのは、今一連の動きのせいと考えたら、雨宮も自分の(事件の)関与を感じ取ったのかもしれないわね。
二崎会との関連。外交官と二崎会。
事件を調べている検察にとって重くのしかかる2つの力。
でも、久利生はブレない。
人生がかかっている事件の当事者たち。
彼らのことを考えると、久利生にひるんでる暇はないのよね。
その久利生の気持ちを聞き取った仲間たち。ブレない男のまわりもやっぱりブレないのよね。かっこいい。
そして、違法薬物の密輸に関わる捜査つぶしをねらった犯罪者(?)たちの動きがエスカレートしてきたことで、逆に、その存在が明るみに出だした。
今や、次席検察官も久利生をバックアップしようと外務省の松葉を説き伏せようと頑張っている。
久利生の仲間たちが、ネウストリア人と二崎会のつながりを解き明かそうと町中を駆け回る。
そして、ある接点が生まれた場所、屋外カフェのようなところで、そのつながりを目撃、そして、その現場はお天気お姉さんの天気予報ロケ地になっていたの。
ここに両者の接触はフィルムに収まったってことね。コンパニオンをしていた三城さんは、その両者が接触するパーティで、たまたま彼らの闇取引の情報を知ってしまった。
検察の面々は、三城さんとネウストリア人、二崎会のつながりをおおよそ把握してきたみたい。
でも、事故とのつながりを証明するためには、三城さんがその夜、あの大使館にいたということを立証しなければならない。
ここでようやく、雨宮が久利生のバディとして復活することになるの。
それぞれが違う事件を追う検事という立場ではあるんだけど、結果的に同じ場所にたどり着いたということね。
雨宮が彼氏にお願いして大使館に潜り込むために調達したパーティーへの参加の道。久利生と雨宮が潜入することになった。そこで、大使館の中にいる人たち、それぞれの立ち位置が徐々に明確になり始めた…
相関図③|前代未聞の事件だよ
部長が、最高検の監察指導部に呼ばれちゃったって。
さすがの久利生も部長には頭を下げてた。
でも、その部長が赴いた先で観察指導部が部長に対して言った言葉。「前代未聞だよ」って。
また狭い了見で、自分の浅―い経験だけで、騒ぎ立てるためだけに使われる言葉「前代未聞だよ」。
ごめんなさい、この言葉、ママ的にはトラウマ的に嫌いなもんだから、過剰反応。
でも、このドラマのワンシーンとして使われるくらいだから、もしかしたら、同じように感じる人も多いのかもしれないわね。
部長はその観察指導部を圧倒するほどに吠えまくり、久利生たちは大使館の門を開かせた。
そして、交通事故、出合い頭ではねてしまった件に関して、被疑者の供述の裏付けがとれた。
交通事故の件が一段落して、雨宮が久利生のことをどう思っていたか語るシーンが描かれた。
「久利生さんは、やっぱり久利生さんだった」って言うんだけど、どういうことなのかな。
あの当時も、今も、追いかけることはできるけど、決して追いつくことはできない人…そんな感じなのかな。
仕事のパートナーとしては、追いつくこともできるのかもしれないけど、恋愛感情という部分では、交わることのないところを歩いているのが久利生という人なのかな。
どうなんだろう。こんな人っているのかな。ママにとっては前代未聞だよ。


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