オズがなぜ「西の魔女の箒を持ってこい」と言ったのか、その理由はちゃんと描かれているのよね。
この記事では、映画オズの魔法使いのドロシーの夢構造という視点から、ガルチや占い師マーヴェルとの関係、そしてオズの役割までをゆるく整理してみます。
相関図①|ドロシーの現実世界と夢のはじまり

「ガルチさんが追ってくるわ 怪我は平気?」と犬のトトを気遣いながら家に急ぐドロシー。
家に着くなり「Mおばさん!」って言っているんだけど、お父さんやお母さんはいないのかしら。
調べてみても、ご両親に関わる情報はなさそうね。
映像から伝わってくるのは、カンザスのとっても乾いた感じの場所で、みんなとっても忙しそうにしていて、ドロシーはなんだか孤独を抱えているようにも感じるわね。
そんな彼女にとって、トトは唯一いつでも一緒にいてくれる存在だったのかもしれない。
ところで、ドロシーの周りには3人の男の人たちと叔父さん叔母さんがいるのよね。
まず、3人の男の人たちにドロシーがどんな思いを抱いているのか見てみたの。
「わかってくれないのね」とドロシーが言ったのは、「頭を使え。脳みそがあるのか?ガルチさんにいじめられるならそこに行かなきゃいいのさ」って、ちょっと子供にきつすぎへん?と感じさせるハンク(後、同じ俳優がかかし男として登場)。
ハンクはさらに「頭の中身はワラか」とまで言っちゃうのよね。これにはドロシーも頭に来たんじゃないかな。きっと、お前こそ頭空っぽやないか!って思ったかも。夢にまで出てきそうよね。
続いてジーク(後に同じ俳優がライオンとして登場)。彼に対しては「私より臆病なのね」って。
豚たちの中に落っこちたドロシーを、ためらいなく助けに向かった彼。
救い出した後で、自分の心臓のあたりに手を当てて、とっても怖かったって表情。
あとはね、ヒッコリー(後にブリキ男として登場)。
彼、目の前で指を挟まれ、とても痛がっていたハンクを見ながら無表情。
そんな現場をドロシーは目撃してたのよね。
この人、目の前で痛がってるハンクを見て、「大丈夫か?」の一言も言わないし、ジークが豚小屋からドロシーを救いだした後に胸を押さえて座り込んでしまった姿を見て、「情けねえ」とか言っちゃう。
ドロシーはそんな彼の「心ない言葉や態度」を目に焼き付けたのかもね。
「いつか大物になって私の銅像が…」とか言っていたのが、この少女の心に金属でできた体のイメージと、なんか変わったことを言うやつみたいな思いと共に刻まれたのかも。
そして、ドロシーの心の中に、とんでもなく恐ろしい存在として焼付いてしまったのがガルチ。
ガルチはトトが自分の足にかみついてきたって言ってて、捕まえて保安官に差し出すというの。
まさに、トトの命を奪わんとしている。
ガルチに対してドロシーが言ったのは「あなたは魔女よ」。
因みにもうお分かりの通り、ガルチを演じた俳優さんは悪い魔法使いとしても登場するの。
ドロシーはもう、そんな場所にうんざりしてしまったのね。
悩みのない場所はきっとあるはず。船や汽車で行けない遠い場所。月の裏側?雨の向こう?はるか虹の向こう側?
そこは夢がかなう場所って歌っているわ。
ガルチから逃れようとトトを連れて家をでたドロシー。
ほどなく彼女は初老の占い師マーヴェルに出会う。
そこまでの道、ドロシーが歩いてきた道は、もうほとんど何もないカンザスの乾ききった大地の中の一本道って感じ。
そこに思いがけず人が現れたもんだから、それはもうすがりつきたくもなるわよね。
このおじさん、占いを生業にしてるんだけど、子ども相手だものね、自分には何でもオミトオシって思いこませるくらいはお手のもの。
マーヴェルをすっかり信じ込んだドロシーが彼に言った言葉は「すごいわ(どうしてわかるの)。心読めるの?」。
マーヴェルは後に、オズの魔法使いや御者や門番の姿になって登場する。
人をだますためならあの手この手とまあ見事に頭が回るの。
一緒にヨーロッパに行きたいとか言い出したドロシーに、マーヴェルは水晶に聞いてみてからだって言った。
水晶を覗き込んで、Mおばさんが倒れてるとか言って、ドロシーが家に戻るようにうまく仕向けた。
この手法、自分のことを信じてくれた人から、彼にはできそうもないことをお願いされたときに使う常套手段。
でも、そんな彼の真の姿が、ドロシーの心の中では何となく感じられていたのかもしれないわね。
Mおばさんのところへ帰ろうと、マーヴェルのところを去ってほどなく、大きな竜巻がやってきた。
なんとか家までたどり着いたものの、みんなが避難した地下室へ入ることができなかった。
ここでもし、ドロシーが地下室に非難できていたら、この物語は生まれることはなかったに違いない。
なぜって、それは、物語の終わりに明らかになるわ。
それにしても巨大な竜巻。このシーンの迫力ってすごい。こんなシーンどうやってとったのかしら。
そして、竜巻がやってくると、室内に取り残されたドロシーは、強風で飛ばされた窓枠が頭にぶつかり、気を失って倒れてしまった。
家が宙を舞っているシーンで、これはやばいんじゃないって一瞬思うんだけど、そのあとにつづく窓から見える景色に、ニワトリがでてきたり、編み物するおばあさん、ボートをこぐ男性が出てきたり、しまいにはガルチが自転車をこいでいたり、かと思えば、そのガルチが魔女に姿を変えてしまったり…ここまで親切に色々見せてくれると、なるほど、これは、気を失ったドロシーが見ている幻っていう設定なのねって自然と理解できる。
その幻の中には、もちろん、目を覚ました自分自身も登場することになるんだけど、それがオズの国でのドロシーの冒険として描かれるのね。
相関②|夢のオズの国で出会うもう一人の大人たち(グリンダと西の魔女)
その夢の中で、吹き飛ばされていた家は無事(?)着陸。
その地は、まるで夢物語の世界。いや、夢なのよね。
見たことないような植物が生い茂り、穏やかな日差しが降り注ぐ。
青い水をたたえた人工的な水辺があって、まあそこがカンザスでないことは見た目にも明らか。
そこに、ピンク色に輝く大きなシャボンがやってきて、中から淡いピンクのドレスを着て、先端に星が付いた杖を持った若くきれいな女性が現れる。
その女性は、ドロシーに「あなたはよい魔女?それとも悪い魔女?」って尋ねるんだけど…この魔女さん、ちょっと混乱してるって言うの。
彼女、新しい魔女が東の魔女に家を落としたって聞いたって言うの。
つまり、新しい魔女が出現したって聞かされていたみたいなのよね。
真っ赤に光り輝く靴を履いた東の魔女が、確かに家の下敷きになってる。
家を落としてくるくらいだから、このピンクの魔女さんがドロシーのことを魔女だと信じてもしょうがないわよね。
この魔女さんは北の魔女のグリンダ。
グリンダの説明によると、落っこちた場所はマンチキンと呼ばれる小人たちが住む国で、意図せずして落下させた家のせいで東の悪い魔女が死んで、マンチキンたちはみんな喜んでいるんだって。
その家と共にやってきたドロシーは英雄扱い。
歓迎のセレモニーみたいなのが執り行われていたところに、突然赤い煙が立ち上り、中から緑色の顔をした悪い魔女が現れた。
もうガルチさんそのものって雰囲気。現れたのは西の魔女。
家の下敷きになった東の魔女の妹。姉よりもさらにひどいんだってグリンダは言ってる。
姉を殺した仕返しをしてやるって。
息まく西の魔女に、グリンダがなんか言ってるの。ルビーの靴がどうのこうのって。
東の魔女が履いていた真っ赤に輝く靴ね。
あの靴があるのとないのとでは、魔力に差が出るということなのかしら。
グリンダがそのルビーの靴のことを告げるのと同時に、その靴は、ドロシーの足へと移動していたの。
そのルビーの靴を取り返して、それからドロシーに仕返しをしてやる!って、なんかそんなまどろっこしいことになってる。
で、どういうわけだか、ここでもトトの命が悪い魔女に狙われている。
明らかに、ガルチつながりを感じさせるわね。
ルビーの靴がないと魔法が使えないのかと思いきや、再び赤の煙を立ち上らせて一瞬にして姿を消した西の魔女。
ルビーの靴がなくても、ある程度の魔法は使えるということかしらね。
展開の速さについていけないドロシーにグリンダが助言してる。
西の魔女に狙われたから、早くオズの国を出た方がいいって。
でも、カンザスへの帰り道がわからない。
グリンダは、オズの大魔法使いのところに行くようにアドバイスしたの。
その人は良い人なの?と尋ねるドロシーに、グリンダは「不思議なお方よ」って。
あの占い師の姿がかぶってしまうから、「不思議なお方よ」っていう言葉がなんだかおもしろく感じられてしまう。
大魔法使いのところへは、黄色いレンガの道をたどっていけば行けるのよね。
相関③|なぜオズは西の魔女の箒を奪わせたのか?
道中、リンゴの林でかかし、ブリキ男に遭遇。
かかしは脳みそが欲しくって、ブリキ男は心が欲しいのよね。
でもね、彼らは大魔法使いがそれらの欲しいものを与えてくれなかったとしても、ドロシーの旅にはついていくんだっていうの。
ここまでに魔女のちょっとした攻撃を1回受けてたんだけど、なんか彼らの心はちょっと結ばれたみたいね。
森がだんだん暗くなってきた。そこに現れたのはライオンね。
3人をいじめようとして、逆にドロシーにたしなめられた。弱い者いじめするなんて臆病者!って。
彼が欲しいのは勇気なんだって。
カンザスへの帰り道を教えてほしいドロシー含め、4人はオズの魔法使いに会うために進んでいった。
4人は西の魔女が毒を仕込んだケシの花畑に差し掛かった。
ここでドロシーとライオンは魔女の思惑通りに眠ってしまうの。トトも眠った。
生身のいきものは毒にやられてしまうみたいね。
でも、かかしとブリキ男は大丈夫。
脳みそがないとか心がないとか言っていた二人なのに、ドロシーたちの危機を感じ取って、しっかりと助けを求めていたわ。
そして、そこにグリンダからの助けが入ることになるの。雪をふらせて、悪い魔女の魔法からドロシーたちを救ったの。
オズの大魔法使いがいるエメラルドの都に到着した4人。
御者や門番、そして大魔法使いとして大忙しの役者さん。
4人が大魔法使いへの御目通しを願いでるんだけど、最初は断っていた門番。
でも、ドロシーが東の魔女をやっつけた少女だと知ると、話は別だといって、大魔法使いへの謁見を許可したの。
そもそも、門番=大魔法使いなんだけどね。なのに、なんで?
最初、大魔法使いは会わないって言ってるっていうんだけど。
わけはよくわからないけど、ドロシーが叔母のもとに帰れない絶望を涙ながらに語っている姿を見て、門番は心変わり。オズ様のところに案内するから泣かないでくれって。
ドロシーたちは、オズの魔法使いに会うことができたんだけど、オズの魔法使いは、門番であり御者でもあるあの男。
そうと分からぬように大仕掛けの巨大化した怖ろしい姿で、ドロシーたちの願いを一応確認。
でも、その願いを叶えてあげられる力はないのよね。
そうはいっても、それは、ドロシーの夢の中に現れるオズの魔法使いがそういう設定だっただけの話。
彼は、ドロシーが現実世界で出会った占い師の象徴なのよね。
だから、彼がやりそうなことといえば、あれやこれやと理由をつけて、自分にそんな力がないことをばれないようにすること。
前は、ドロシーがヨーロッパに連れて行ってほしいと願った時、具合の悪くなったMおばさんの話をしてドロシーを追い返した。
今回は、西の魔女の箒を奪ってこい、そうすれば、願いをかなえてやるって。
なんで、西の魔女を倒してこいって言わずに箒を奪ってこいとか、まどろっこしいこと言うんだろみたいな話もあるんだけど、そもそも、ドロシーがカンザスで出会ったことのある人の中で、命を奪うくらいのキャラといえば、トトの命を奪おうとするガルチくらいなものなのよね。
だから、西の魔女はとても残虐なキャラとしてドロシーの夢の中に現れる。
でも、オズは占い師のマーヴェルが象徴化した存在で、人のことをペテン師の如くに騙しはするけど、誰かの命を奪うことを企むようなキャラではないのよね。
だから、西の魔女を殺せだとかそういう指示は出さないんだと思うの。
それに、オズがその指示を出した目的は、自分に魔法の力がないことを見抜かれないように、ドロシーたちを追い返したかっただけなんだものね。
西の魔女を探しに行ったドロシーたちを、当の西の魔女は水晶の中でモニターしてたの。
そして、彼女は羽の付いたサルたちにドロシーたちをとらえさせた。
魔女の狙いはドロシーが履いたルビーの靴。
これを手に入れれば、魔女の魔法の力は最大になると言っていたわ。
でも、魔女は力づくでこの靴を奪おうとはしないのよね。トトと引き換えだって。
魔女が自分の意志で動いている実体のある存在なら、きっと力づくで奪ったと思うのよね。
でも、魔女もあくまでドロシーの夢の中のキャラだから、あまり暴力的な振る舞いはしないのかな。
魔女がドロシーが履いている靴にふれようとしたら、何やら感電したみたいになって、触れることができなかった。
夢の中の設定は「おまえ(ドロシー)が生きている限り靴は脱げない」という設定になっちゃった。
そういえば、ママが眠っている間に見る夢も、さっきまでいた人が別の人にすり替わっていたり、脈略あるようでないっていうこともしばしば。
それに比べれば、流れはキープできているわよね。
追い詰められたドロシーを救ったのは、かごから逃げ出したトト。
ドロシーの現実世界でも、トトはガルチの自転車のかごから逃げ出した。
ドロシーはその場面は見ていないはずだけど、夢の中でも同じような情景を思い描くというのが面白いし、実は現実世界でも、自分が見聞きしていないけどどこかで起こっていたことが夢のなかにあらわれたりするのかも..ってちょっと興味をそそられたわ。
ガルチ、いや西の魔女は、大きな砂時計を出してきて、お前の命はこの砂がおちるまでだ。。って、ドロシーの命に迫ってきた。
きっとこれは、トトのことを自分の命に代えても守りたいというドロシーの気持ちが夢の中に現れたのね。
現実世界ではトトの命だけを奪おうとしたガルチが、夢の中でより凶暴化して現れた…って感じかしら。
それとも、トトの命が奪われるというのは、ドロシーにとっては自分の命を奪われるにも等しいことだったのか。
西の魔女のもとから逃げ出したトトが、かかしたちのところにたどり着き、囚われたドロシーのもとに導いた。
彼らにとっては勝ち目など見いだすことは不可能と思われるほど堅い守りの魔女の館。
臆病者のライオンが、ドロシーのためだ魔女なんか恐れないぞってものすごく勇ましくなってる。多少の躊躇もあったみたいだけど(笑)。
頭空っぽのはずのかかしは次から次に攻略のアイディアを思いつく。
相関④|オズは結局何をしたのか?与えたのは“象徴”という名の気づき
結局、オズの魔法使いはインチキだったんだけど、ドロシーを助けた3人それぞれに望みのものを与えていた。
でもね、ブリキ男にささげた言葉だけは、どうだったのかな。
心の評価は、どれだけ人に愛されるかで決まるっていうんだけど、あの当時はそういう理解が一般的だったのかな。
でも今では、心の評価はどれだけ人を愛するかっていう方が重要といわれだしているわよね。
人にどれだけ愛されているかなんて求めだしたら、とてもしんどくなってしまうんじゃない?
自分が愛した分だけ、すべて返ってくるとは思わないけど、その方がより多くの人たちの心に光を灯すことになるんじゃないかしら。
でも、忘れてはならないのは、これはドロシーの夢ってことよね。
ドロシーは、人に愛されてなんぼと考えていたのかもしれない。
彼女は、カンザスの家にいた時、とても忙しい大人たちの中で、自分の居場所がなかなか見つけられずにいた。
愛されていないと思っていたのかな。
でも、実際にはとてもとても愛されていたのよね。
その愛は、この夢の中の旅に付き合ってくれた、かかし、ブリキ、ライオンの3人が示してくれた。
彼女は心の奥底では、カンザスの農場でともにいた3人の男性が自分のことを愛していてくれたことを感じていたのかもしれない。
今、この夢の中で、ドロシーはそんな自分を取り巻く周りの大人たちの愛をオズの口を借りて再認識したのかもしれないわね。


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