オズがなぜ「西の魔女の箒を持ってこい」と言ったのか、その理由はちゃんと描かれているのよね。
この記事では、『オズの魔法使い』をドロシーの夢構造という視点から、オズの役割、そしてドロシーがこの旅で何に気づいたのかまで、相関図とあわせてゆるく語っています。
相関図①|ドロシーの現実世界と夢のはじまり

「ガルチさんが追ってくるわ 怪我は平気?」と犬のトトを気遣いながら家に急ぐドロシー。
家に着くなり「Mおばさん!」って言っているんだけど、お父さんやお母さんはいないのかしら。
調べてみても、ご両親に関わる情報はなさそうね。
彼女を取り巻く大人たちは、みんなとっても忙しそうにしていて、ドロシーはなんだか孤独を抱えているようにも感じるわね。
そんな彼女にとって、トトは唯一いつでも一緒にいてくれる存在だったのかもしれない。
ところで、ドロシーの周りには3人の男の人たちと叔父さん叔母さんがいるのよね。
まず、3人の男の人たちにドロシーがどんな思いを抱いているのか見てみたの。
「頭を使え。脳みそがあるのか?ガルチさんにいじめられるならそこに行かなきゃいいのさ」って、ちょっと子供にきつすぎへん?と感じさせるハンク(後、同じ俳優がかかし男として登場)。
ハンクはさらに「頭の中身はワラか」とまで言っちゃうのよね。これにはドロシーも頭に来たんじゃないかな。きっと、お前こそ頭空っぽやないか!って思ったかも。夢にまで出てきそうよね。
続いてジーク(後に同じ俳優がライオンとして登場)。彼に対しては「私より臆病なのね」って。
あとはね、ヒッコリー(後にブリキ男として登場)。
この人、目の前で痛がってるハンクを見て、「大丈夫か?」の一言も言わないし、ジークが豚小屋からドロシーを救いだした後に胸を押さえて座り込んでしまった姿を見て、「情けねえ」とか言っちゃう。
ドロシーはそんな彼の「心ない言葉や態度」を目に焼き付けたのかもね。
「いつか大物になって私の銅像が…」とか言っていたのが、この少女の心に金属でできた体のイメージと、なんか変わったことを言うやつみたいな思いと共に刻まれたのかも。
そして、ドロシーの心の中に、とんでもなく恐ろしい存在として焼付いてしまったのがガルチ。
トトの命を奪おうとするガルチに対してドロシーが言ったのは「あなたは魔女よ」。
因みにもうお分かりの通り、ガルチを演じた俳優さんは悪い魔法使いとしても登場するの。
ドロシーはもう、そんな場所にうんざりしてしまったのね。
悩みのない場所はきっとあるはず。船や汽車で行けない遠い場所。月の裏側?雨の向こう?はるか虹の向こう側?
そこは夢がかなう場所って歌っているわ。
ほどなく彼女は初老の占い師マーヴェルという男性に出会う。
このおじさん、占いを生業にしてるんだけど、子ども相手だものね、自分には何でもオミトオシって思いこませるくらいはお手のもの。
このマーヴェルは後に、オズの魔法使いや御者や門番の姿になって登場する。
人をだますためならあの手この手とまあ見事に頭が回るの。
ところで、ドロシーが竜巻に襲われるシーンがあったけど、もし、ドロシーが地下室に非難できていたら、この物語は生まれることはなかったに違いないわね。
なぜって、それは、物語の終わりに明らかになるわ。
相関②|夢のオズの国で出会うもう一人の大人たち(グリンダと西の魔女)
北の魔女グリンダがね、ドロシーに「あなたはよい魔女?それとも悪い魔女?」って尋ねるんだけど…この魔女さん、ちょっと混乱してるって言うの。
新しい魔女が出現したって聞かされていたみたいなのよね。
グリンダの説明によると、そこはマンチキンと呼ばれる小人たちが住む国で、意図せずして落下した家のせいで東の悪い魔女が死んで、マンチキンたちはみんな喜んでいるんだって。
歓迎のセレモニーみたいなのが執り行われていたところに、突然赤い煙が立ち上り、中から緑色の顔をした悪い魔女が現れた。
もうガルチさんそのものって雰囲気。現れたのは西の魔女。
家の下敷きになった東の魔女の妹。姉よりもさらにひどいんだってグリンダは言ってる。
姉を殺した仕返しをしてやるって。
西の魔女に狙われたから、早くオズの国を出た方がいいって。
でも、カンザスへの帰り道がわからない。
グリンダは、オズの大魔法使いのところに行くようにアドバイスしたの。
その人は良い人なの?と尋ねるドロシーに、グリンダは「不思議なお方よ」って。
あの占い師の姿がかぶってしまうから、「不思議なお方よ」っていう言葉がなんだかおもしろく感じられてしまう。
大魔法使いのところへは、黄色いレンガの道をたどっていけば行けるのよね。
相関③|なぜオズは西の魔女の箒を奪わせたのか?
彼は、ドロシーが現実世界で出会った占い師の象徴なのよね。
だから、彼がやりそうなことといえば、あれやこれやと理由をつけて、自分にそんな力がないことをばれないようにすること。
前は、ドロシーがヨーロッパに連れて行ってほしいと願った時、具合の悪くなったMおばさんの話をしてドロシーを追い返した。
今回は、西の魔女の箒を奪ってこい、そうすれば、願いをかなえてやるって。
なんで、西の魔女を倒してこいって言わずに箒を奪ってこいとか、まどろっこしいこと言うんだろみたいな話もあるんだけど、そもそも、ドロシーがカンザスで出会ったことのある人の中で、命を奪うくらいのキャラといえば、トトの命を奪おうとするガルチくらいなものなのよね。
だから、西の魔女はとても残虐なキャラとしてドロシーの夢の中に現れる。
でも、オズは占い師のマーヴェルが象徴化した存在で、人のことをペテン師の如くに騙しはするけど、誰かの命を奪うことを企むようなキャラではないのよね。
だから、西の魔女を殺せだとかそういう指示は出さないんだと思うの。
それに、オズがその指示を出した目的は、自分に魔法の力がないことを見抜かれないように、ドロシーたちを追い返したかっただけなんだものね。
ところで、ドロシーが追い詰められて、かごから逃げ出したトトが救うという場面があったんだけど、…
ドロシーの現実世界でも、トトはガルチの自転車のかごから逃げ出していたのよね。
ドロシーはその場面は見ていないはずだけど、夢の中でも同じような情景を思い描くというのが面白いし、実は現実世界でも、自分が見聞きしていないけどどこかで起こっていたことが夢のなかにあらわれたりするのかも..ってちょっと興味をそそられたわ。
相関④|オズは結局何をしたのか?
結局、オズの魔法使いはインチキだったんだけど、ドロシーを助けた3人それぞれに望みのものを与えていたのよね。
でもね、ブリキ男にささげた言葉だけは、どうだったのかなって少し考えてしまったの。
心の評価は、どれだけ人に愛されるかで決まる、そんなふうにも聞こえるのよね。
あの当時は、そういう考え方も今より自然だったのかもしれないわ。
でも今では、心の価値って、どれだけ人に愛されたかより、どれだけ人を愛せたかの方が大事だと言われることも多いわよね。
人にどれだけ愛されているかを求めはじめると、しんどくなってしまうこともあるもの。
自分が愛した分だけ全部返ってくるとは限らないけれど、その方が、誰かの心に光を灯すことはできるのかもしれないわ。
でも、忘れてはならないのは、このお話はドロシーの夢の中の出来事ってことよね。
ドロシーは、人に愛されてなんぼと考えていたのかもしれない。
カンザスの家にいた時の彼女は、とても忙しい大人たちの中で、自分の居場所がなかなか見つけられずにいたようにも見えたの。
愛されていないと思っていたのかな。
でも、実際にはとても愛されていたのよね。
その愛は、この夢の中の旅に付き合ってくれた、かかし、ブリキ男、ライオンの3人が示してくれていたようにも見えるの。
彼女は心の奥底では、カンザスの農場でともにいた3人の男性が、自分のことを大切に思ってくれていたと感じていたのかもしれないわ。
そしてこの夢の中で、ドロシーは、そんな自分を取り巻く周りの大人たちの愛を、オズの口を借りてあらためて受け取ったのかもしれないわね。


コメント