『スパイダーマン2』では、糸が出なくなったピーターの姿を通して、「力を持つこと」と「生き方を選ぶこと」が問い直されていたように思います。
なぜ彼はスパイダーマンであることをやめ、そして、なぜもう一度それを選びなおせたのか。
この物語を相関図とともに振り返りながら、その心の変化を追ってみたいと思います
相関図①|ピーター・パーカーという青年が抱え続けているもの

1作目のスパイダーマンを見ていない人にとっては、ちょっと人物紹介が必要かしら。
冒頭から目まぐるしく人物が登場する割には、その説明はほとんどなされないまま進んでいく感じ。
まず主人公、スパイダーマンとして活躍する青年は大学生のピーター・パーカー。
ご両親がいないんだけど、その理由はここまでのところ不明。
ニューヨークで、ベン・パーカーおじさんとベン・パーカーおばさんの元で暮らしながら大学に通っていた。
幼なじみと呼んだらいいのか、お互いに思い合っているのに、なかなか引っ付くことができずにいるお相手が、ヒロインのメリー・ジェーン・ワトソン(MJ)。
そして、ハリー・オズボーン。ピーターの親友で、MJ(メリー・ジェーン)ともかなり緊密な付き合いをしている存在。
ピーターはこの2作目では家を出て一人で住み始めているみたい。
でも、もともと一緒に住んでいた叔母とは、ちゃんとコンタクトを取っているみたいね。
叔母は2年前のある日、夫をある事件で亡くしてしまい、ピーターとしても気になるのよね。
それに、ピーターは、自分のせいで叔父を死なせてしまったと思ってるの。
そのいきさつを、実は、叔母はまだ知らない。
だから、ピーターとしてはなおさら叔母を一人ぼっちにはしておけないんだと思う。
冒頭から、一人取り残された叔母も生きていくのに一生懸命なのがよく伝わってくる。
叔父が他界してからもう2年。もしかしたら、今が一番苦しい時かもしれないわね。
寂しさと、一人になってお金も底をついてきた感じ。
ピーターが、叔母の家を出たところでMJに出くわす。
彼女、女優としてのキャリアが始まりだしたみたいね。今は舞台女優という感じなのかな。
でも、広告に起用されてたりするみたいだから、ちゃんと仕事としてできているみたいね。
1作目ではね、その夢は持っていたんだけど、最初は苦労していたの。
そして2年の間、夢に向けて着実に歩みを進めていたということね。
ここでのMJとピーターの微妙な距離感。距離を縮め、よくわからない関係をクリアにしようとするかのようにピーターに問いかけるMJ。
対して、ピーターは、かたくなにその距離を維持しようとするの。
つまり、MJに対して抱いてる彼の気持ちは絶対に伝えないという構え。
なんでかっていうと、もう、彼の中で、スパイダーマンとしてのキャリアは確定的なものになっていて、それは、永遠に失われることのないキャリアだと自分自身認識しているのよね。
でも、すごく葛藤があるようなの。
だから、MJにとってピーターは、いまだ謎多き青年。
MJも大変。彼に必死の思いで迫るんだけど、交わされるとわかるや、気持ちをおさえて「好き」の代わりに「お誕生日おめでとう」といってその場を終わらせないといけないんだから。
そして、今回の主役の一人、オットー・オクタビアス(ドクター・オクトパス)の登場。天才科学者。
なんか、そこいらのビルの中に核融合装置を作ってしまう天才(?)科学者。
ここで、天才ドクターとピーターが科学的見地から話をしているようなんだけど、ここでピーターは、その教授の考えの危険性を指摘していたらしいの。
全然わからなかったんだけど、ピーターの天才っぷりが盛り込まれていたのね。
実はこの後、その公開実験の暴走がもとで、今この場に同席していたオットーの妻、ロージー・オクタビアスが命を落とすことになるんだけど、ロージーは完全に旦那のオットーのことを信じていたの。
彼の実験に何の危険もないって。まあ、そこまで信じ込めていての不慮(?)の事故だから、彼女自身には後悔はなかったって思っていいのかな… 逆にそんな彼女が犠牲になるのはかわいそうなんだけど、でも、そのあとのご主人の姿を目の当たりにする方がもっとつらいか…
オットー、科学以外のことはまるでわからんみたいなことを言いながら、人としてとてもシンプルで、でも見落としがちなことをすっごく端的に伝えることができる素敵な人だったのよね。
オットー:「好きな人はいるのか?」ピーター:「わかりません」オットー:「君がわからなくて誰がわかる?」ロージー:「きっと秘密の恋なのよ」オットー:「秘密はいかん。恋のような面倒なものを隠していると、病気になる」。
そういえば、恋の病とか、昔の言葉にはあったわよね。今もあるのかしら。
その通り、恋もね、その思いをこじらせちゃうと、体に変調とか出てくるのわかるような気がするわ。
因みに、ピーターの見事な肉体、これは、高校の時にクモに噛まれたときにおこった体の変化によるもの。
そのクモというのがスーパースパイダーだったんだけど、そのDNAか何かの影響を受けたようなのよね。
それ以来、体はスーパーと呼ぶにふさわしい肉体へと変わり、視力なんかも眼鏡が不要となるどころか、それ以上のレベルになっているみたいね。
彼の肉体のスーパーパワーは、よくある変身ヒーローものとは異なり、スパイダーマンのスーツの着用を必要としないの。
そして、そんな彼の体に変調が起こるのに、時間はかからなかった。
女優になったMJの舞台を見るために訪れた劇場近くで、彼女が別の男性とキスするところを目撃してしまったの。
一刻も早くその場を立ち去りたかったんでしょうね。スパイダーマンの姿で、いつものように宙を舞っていたんだけど、突然、手首からの糸がでてこなくなって、彼はあえなく地上に落下してしまったの。
相関②|精神を病んだ二つの体
オットー・オクタビアスの実験は失敗に終わった。
でも、失敗に終わっただけでは終わらなかったのよね。
彼が、本来の目的である核融合によるエネルギーを作りだすために製造した4本アームの機械なんだけど、これが暴走を始めた。
機械という言葉よりも、これはオットーと一体化したアンドロイドと呼んだ方がイメージに合うのかも。
腕のくせに、それ自体が人工知能を持っていて、本来は制御回路でオットーの意思のもとで動くはずだったんだけど、おそらくは、博士の何かの計算違いのせいなのかしら、逆にオットーの方がその腕に乗っ取られて制御されてしまっているの。
残念なことに、その腕がもつ意志というのは、あらゆる場面で人を傷つける方向で動きだした。
失敗に終わった実験を失敗に終わらせない。それが腕がもっている人工知能の意志だったようね。
世間の目は、失敗科学者に冷たいのかな。
というよりも、あの、ピーターの写真を買い取ってくれる新聞社があおっているせいなのかな。
オットー・オクタビアスは、ドクター・オクトパスなどと呼ばれながら、暴走をエスカレートさせていくことになるの。
核融合を使って太陽の力を手に入れるんだって。
温厚な科学者といわれていた人なんだけどね。
それがね、人工知能の制御下に置かれたとはいえ、目的が実験を成功させるための「お金」になったとたん、完全に狂人状態に陥ってしまうの。
その悪っぷりは、ある意味シンプルに描かれていた。
銀行に来て、金庫の頑丈な扉を強力な腕のパワーに任せて破壊、お金をつかみ取るかのように奪っていこうとする。
その時ね、叔母さんと一緒にピーターがその銀行を訪れていたの。
銀行で暴れるそのドクター・オクトパスと対峙すべくスパイダーマンとなって戦おうとするんだけど、例のクモの糸が発射できないモードに入ってしまってたの。
これ、明らかに、自分の思いを表に出すことができない状態で、好きな人が他の男性とキスしてしまっているのを目撃したりした心のダメージが体に現れたものに違いない。
でも、ピーターが心病んでしまった原因はほかにもあって、あの新聞社、スパイダーマンのことを記事にするのはいいんだけど、悪口ばかりを書いていたんですって。
そういえば、目の前にいる科学者オットーさん、ピーターとであったばかりの頃、こんなこと言っていたのよね。
「優秀なだけではだめだ。努力しろ。授かった知性は特権ではなく授かりものだ。世のために使うのだ」って。
スパイダーマンとしての能力は単に知性というものとは違うのかもしれないけど、その力は授かりもの。
それは人のために使わなければならないって、もしかしたら、ピーターは人にそんなことを言われるまでもなく、自分自身が一番そんな風に自分を律しようと思っていたのかもしれないわね。
亡くなった叔父さんがね、こんな風にも言っていた。
「大いなる力は大いなる責任が伴う」この言葉は、1作目でおじさんが亡くなってしまう少し前、ピーターがおじさんから聞いた最後の言葉だったのよね。
そのあと、ピーターは叔父さんに悪態をついて別れてしまったものだから、この言葉がピーターには重く心の中にとどまり続けていたのかもしれない。
彼は、大きな力を得て、その先にある責任の方に意識を囚われ、気持ちを病んでいってしまったんじゃないかしら。
自分の心がどうなっているのかわからないって。
スパイダーマンであることを望んでいないって。
でもね、その原因になっていたのは、叔父との悲しい別れと、すべてを明かすことができず、相手への思いも伝えることができずにいるMJとの関係。
逆に言えば、この二つの壁にどう向き合うかが見えてきたら、また、スパイダーマンとして大きな責任を果たすことを自ら望むような心境になるかもしれないわね。
だって、それが、天から与えられた力なんだから。
でも、ひとまずはスパイダーマンであることを捨てたみたい。
糸はでなくなった。眼鏡も必要になった。どんくさく以前のように道端でこけたりもする。
学業優秀な、普通の学生さんとしての生き方を選んだということね。
相関③|真実を知った叔母が手を引いた理由
叔母さんの心境がね、なかなか計り知れない。
ご主人は、殺人という特異な状況で殺されてしまったのよね。
そして、2年間たった今でも、その悲しみに向き合いながら、それに、お金も無くなってくるという状況の中で必死に生きている。
もうこれ以上の変化に耐えられないギリギリのところで暮らしていたんじゃないかな。
ピーターが、事件当日のことを叔母に話した。
自分があの時選んだ行動のせいで、おじさんが亡くなってしまったと。
ピーターはピーターで、そのことが胸の奥につかえながら2年間を過ごしていたのよね。
きっと、叔母にそのことを伝えた時、純粋に叔母や叔父に詫びるつもりで言ったんじゃないかなって思うの。
そのあと、叔母がどんなふうに反応するかもわかっていなかったんじゃないかな。
でも、実際に目の前の叔母は、自分が重ねる手から逃げ去るように手を引いて、叔母の部屋に戻っていってしまった。
ピーターは自分に都合のいい結末をイメージしていたわけではないんだと思う。
それでも、叔母が自分から距離を置くように去っていったことはショックだったに違いない。
先にも書いたように、叔母は、もう新しい状況や情報を受け入れる心の余裕がもうなかっただけなんだと思う。
でも、少し時間をかければ、そこには、ピーターを愛する気持ちがちゃんとあることに気づいて、ピーターを責めることはないんだと思うし、実際にそのように描かれたわね。
心の余裕をなくして、暴走しそうになっている人がもう一人いたわね。
ピーターの親友、ハリー・オズボーン。
父親をスパイダーマンに殺されたと思い込み、ピーターはそのスパイダーマンに肩入れしていると思っている。
さらに、当時付き合っていたMJとの仲も、もう終わりを迎えようとしていたと思うんだけど、そのとどめがピーターとの関係にあったと思い込んでいるのよね。
まあ、その点は、もともとMJはピーターのことが好きだったんだから、しょうがないかなとも思うんだけど。
それは、ハリーもある程度はわかっているのかな。
だから、彼の恨みつらみのほとんどは、今はスパイダーマンにむけられている。
オットーがやってきて、ハリーに追加のトリチウムを要求したんだけど、ハリーは取引としてスパイダーマンを生け捕りにしてつれてくることを条件として提示したの。
相関④|選びなおすということ
ピーターはスパイダーマンであることをやめ、元のように生きようとしていた。
でも、それでも目の前で起こることはつらいコトばかり。
何かを選べば状況が変わると思っていたのに、何も変わらない。
どうしたらいいんだって、悩んでしまってるの。
でもそこから立ち直るのに、それほどの時間はかからなかった。
あの時、ピーターが重ねる手からそっと手を引いてしまった叔母がね、ピーターに「愛してるよ」って、つまりそのことは、もう何も気にしていないよって伝えてあげたの。
そして、ピーターの心の中で何かが動いたみたい。
その日、叔母は、独り身となった自分に合ったアパートに引っ越すと言って荷造りをしていた。
向かいに住む9歳の男の子に手伝ってもらいながらね。
ピーターはそこで、9歳の子どもの心の中にスパイダーマンというヒーローがいることを知るの。
自分の居所を失ってしまっていたピーターにとっては、何か光が見えた瞬間だったんじゃないかな。
自分の居場所って、もしかしたら誰かの心の中に自分がいるのが見えた時、そこが居場所になるのかもしれないわね。
今、ピーターは、9歳の子どもの中に、自分のことをヒーローとしてみてくれて、夢や希望という光の中で思ってくれているというのを知った。
叔母さんは、いろんなことがあったけど、自分のことを心の中で愛してくれているのがはっきりと見えた。
誰かの心の中に、自分がどんな姿で描かれているのか、それに応えるように、その人のために尽くしていく場所、それが居場所というものなのかな。
ピーターは、その子供の中に、ヒーローであるピーター、いや、スパイダーマンがいることを知った。
だから、彼は、再びスパイダーマンとして生きていくことを選びなおせたんじゃないかなって思うの。
戻った後、彼の周りにどんな奇跡が起こったか…ここから先は、是非、映画を視聴して確認してみてくださいね。
まとめ|
ピーターは、大きな力を授かったことで責任を背負い込みすぎ、自分の気持ちや弱さを後回しにしてきた。
その結果、糸が出なくなり、スパイダーマンであることすら手放すことになったんだと思う。
でも、叔母の言葉や、ヒーローを信じる子どもの存在を通して、ピーターは「誰かの心の中にいる自分」に気づいた。
守るべきものは義務や責任だけじゃなく、誰かの希望の中にいる自分自身ってこともあるのかな。
だから彼は、もう一度スパイダーマンであることを選びなおせたんだと思う。
それは使命に縛られた選択ではなく、自分の居場所を見つけた上での決断だったように思うの。
今日も最後までご覧いただいて、ありがとうございます。


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